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異世界恋愛とかで良くあるお洒落で華麗な商売をするのではなく、シジミを売りになった公爵令嬢の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/10/11

「シジミはいりませんか!泥を吐かせ。ゆでております!」


 私はフランソワーズ、公爵令嬢だったけど、今はシジミ売りだ。



「あ、貴族のお嬢様だ!」

「はい、貴族ですわ。元ですけどね」

「一杯頂戴」

「はい、どうもです」



 私は無一文で追い出されたわ。

 初めは泣いていたけども・・・・この方法はマリーちゃんに教えてもらった。

 貧民の子でシジミを捕って食べている子だわ。


 売れきれたらお仕事は終わりだわ。

 パンと野菜スープを買い。


「毎度、貴族の姉ちゃん」

「美味しいパンをありがとうですわ」


 安宿に戻り食べる。

 売れ残ったら、おシジミ様を自分で食べる。



「もっと、沢山売りに行きたいわね」


 今までは籠だ。天秤棒を考案した。両端にバケットをつみ多く積み込めるわ。


 安宿の共同炊事場を借りて明日の分を煮込む。

 そろそろ流木を取りに行かなければ煮炊きできないわね。


 だけど・・・・


「今日は雨だわ・・・」


 増水して危険だわ。今日はお休み。

 マリーちゃんのところ行こうかしら。


 同じ安宿で暮らしている。

 マリーちゃんは子守をしているわね。


「ごきげんよう。マリーちゃん」

「フランソワーズのお姉ちゃん」

「野菜スープを作りましたの。一緒に如何ですか?」



 雨は止んだが、河は増水しているわ・・・

 手持ちのお金がなくなる。

 仕入れるにもお金がかかる・・・・


「そうだわ。子供相手の商売を思い付いたわ!」


 凧を作ったわ。お手玉を作りそれを天秤棒に担いで売りに行った。



「オモチャいりませんかね!」


「母ちゃん!あの凧欲しー」

「うちの入り用は決まっているんだよ!」



 売れませんわね。

 だから・・・


 紙を買った。初めての仕入れだわ。

 凧は道ばたで落ちていた速報版を拾って再利用しましたの。小枝を拾って骨組み。糸は郊外に生えている麻から作りましたのに、お手玉はボロ布に籾殻を入れて作りましたわ。


 仕入れ値がない商売が素敵ですわね。

 初めての出費ですわ。


 私は文字やかけ算表を書いて売り出すことにしたわ。

 マリーちゃんに見てもらう。


「それ・・・何の役に立つの?」

「それは将来偉くなれますわ」

「嘘、お貴族様はずっと貴族」

「あら、私・・・・」


 勉強しても没落しましたわ。言葉に詰まりました。


 これも売れなかったわ。

 沢山作ったので・・・


 河がおさまりシジミ売りを再開しても一緒に売り出したわ。



「シジミーですわ。お子さん向けの商品もございますわ!」


「文字なんて自分の名が書ければいいじゃん?」


 やっぱりシジミ以外売れなかったわ。


 貧民になるほど煮炊きをしない。何故なら竈を維持するコストがあるからだわ。


「あら、新しく建物が出来るのね」


 建築途中の建物があったわ。大工さん達のお話が耳に入ってきたわ。



「ここは公爵様の商会の建物だからいつも通りしっかり作れよ」

「「「ヘイ!」」」

「お洒落なドレスと小間物、レストランとカフェになるって」


 公爵家・・・この王国で一つしかないわ・・・

 ミリダ・・・



『お義父様、フランソワーズお義姉様がイジワルばかり言うの。私が考えたビジネスプランをダメだダメだって言うのよ・・・』


 ミリダ。お父様が外で作った子・・・

 婚約者も・・・


『ミリダの考えた商売は素敵だな。さすが平民の暮らしをしていただけのことはある。それに比べてフランソワーズは平民感覚がない。まるで傲慢な悪役令嬢のようだ』


 平民、今になったら分かる。ミリダはお父様の仕送りで上級平民の生活を送っていた。


 カフェ、レストラン、ドレス店を一箇所で経営すると言っていたわ。


『素敵を一箇所に集めるのよ』




 ・・・・・・・・・・・




 回想していたら、親方に怒鳴られたわ。


「おい、姉ちゃん!素人が現場に入るな!」


「も、申訳ございませんわ」


「何だ。文字売りの姉ちゃんか。あっちに行け」


「は、はい」



 それからもシジミと子供向けの商品を売る毎日だわ・・・


 ある日の早朝、あの親方が若い衆を連れて安宿にやってきたわ。



「文字売りの姉ちゃんいるか?いた。時間あるか?」

「ないですわ。シジミを売りに行きますわ」

「そんなの良いから相談に乗ってくれ!後で良いだろう?」


「ダメですわ。早く売らないと傷みます」

「・・・分かった。俺が売りに行くからハンスの相談に乗ってくれ!」

「分かりましたわ・・・」



 ハンスさんという方のお話は・・・


「グスン・・・大変だ。俺が屋根で仕事をしていたら、瓦を落しちまった。危うく貴婦人に当たりそうになり尻餅をついてしまった」


 謝罪をしたが許してくれない。

 その日のうちに書類を持って来てこれにサインをしろと迫って来た。

 代書屋に見せたが。


『これは正当な賠償請求です。サインするしかございませんね』


 と言う。

 しかし、サインをしたら・・・


『賠償金金貨100枚を支払う契約ですわ』

『そ、そんな!払える訳がない』



 ・・・・・・・・・・



「そう、過大な請求ね。代書屋さんは何故正当な請求としたのかしら・・・」


 書類を読む。大怪我をしていることになっているわね・・・

 詳細を知らない第三者からみたらそう判断するしかないわね。


 それに・・・マダムの住所が書かれていない。

 ハンスさんはサインをしているが、これは何とかなるかもしれない。



「話合いの場について行ってももよろしいですが、報酬を頂きたいですわ」

「分かった。いくらだ?」

「お給金の三日分でよろしいですわ」



 それから話合いの場に参加したわ。

 マダムの方で未亡人のようだわ。


「書類を確認しましたわ。まず。一つA(アルファー)はハンスさん。B(ベーター)がマダムでよろしいですね」


「ええ、そうですが・・・」


「書類によると怪我をされたようですが、回復術士の鑑定書の添付をお願いしますわ」


「・・・それは失礼よ。疑っているの?まだ、お尻痛いのだから!」

「ご存じだと思いますが王国の法ですわ。金貨1枚以上の請求をする場合添付書類が必要ですわ」

「そんなのないわよ!こちらは被害者ですわ」


「ええ、瓦が落ちてきた。それはハンスさんの落ち度ですわ。でも、故意ではない。マダムを危険にさらした賠償を払うべきですが、明らかに請求は過大ですわ」


「もう、いいわ!施工主に話を持って行くわよ。いいのかしら?」


「それはマダムの自由です。失礼ながら貴族ならご存じだと思いますが、高位貴族は低位貴族に何をしても良いと思っていますわ」


 どうやら、施工主が公爵家だから莫大な賠償をとれると踏んだらしいわね。


「この建物は公爵令嬢の商会の建物になる予定です。現公爵閣下は娘を溺愛し評判を落すようなことをしたら・・・公爵家にはカゲがおります」


「公爵家なら金貨100枚くらい出せるわ」


 これは出せない。お父様は義妹以外にケチ。今度の出店も借金をして資金を抽出している。


「公爵家の家計は火の車ですわ。社交会で噂になっておりませんか?」


「わ、分かったわ。いくらなら払えるの?」

「そうですわね。大工ギルドの担当者と相談して相場をお支払いしますわ」


「分かったわ」



 結局、規定の銀貨3枚を渡し。

 ハンスさんは安全配慮不十分で大工ギルトで指導を受け罰金を支払い。

 私には・・・


「姉ちゃん。いや、先生、受け取って下さい」

「まあ、金貨1枚・・・多すぎだわ」

「親方のお礼も入っております」


 それから文字の姉ちゃんから先生と呼ばれるようになって、親方から小さな一軒屋を斡旋してもらった。


「先生、平屋が空いております。そこで代書屋と先生をして下さい」

「でも、賃料が支払えませんわ」

「半年間無料で良いです。大工ギルドの講師もお願いします。大工だって文字を読めなきゃ話にならねえと評判ですわ」


「まあ・・・」


 お仕事をもらって、シジミ売りは閉店休業状態だわ。


 あの代書屋さんは恋文専門だったらしいわ。法のことは詳しくない。


 私の元に大人が大勢くるようになって。

 妨害に来たりもした。


「皆、騙されるな!この女は義妹をイジメ抜いて婚約破棄をされた悪女だ!そんな女から習ったら悪口しか書けなくなるぞ!」


 目の前が真っ黒になったわ。私の場合、ささいなことが大きくなって、逃げた魔物はドラゴンだったになったわ。


 でも、私の生徒さんたちは・・・


「え、婚約者いないの?俺に機会あるかな」

「俺だって、仕事を速く終わらせたら、手抜きをされていると噂されたぜ」


 庇ってくれたわ。


 それから一年後、親方さんが話を持ってやってきた。


「公爵家の商会の建物買わないか?」

「え、どうなっているのですか?」

「それがな。素敵を一箇所!が宣伝文句だったが、どれも目玉がなくて、それぞれの専門店に客を持ってかれた」


「まあ、発想は悪くなかったのに・・・」


 何だろう。頭にぼんやり浮かんでくるわ。百の貨物を売る。百貨店・・・


「分かりましたわ。今、その建物の所有権は?」

「大工ギルドが債権者達から買い取った。先生なら無利息の割賦でいいぜ」


 結局、買い取ることにしたわ。

 まず一つしたことは、私が公爵令嬢だったときに懇意にしていたドレスの商会に出店をお願いしたわ。


 自分でやる必要はない。


「お久しぶりでございます。奥様の若い時とそっくりになられて・・・」

「商会長、ドレスを買えなくて申訳ございませんわ。実は出店のお話を・・・」


 また、同じくレストランにも話を持って行ったわ。


「フランソワーズ様、お久しぶりでございます」

「ごきげんようですわ。実は居抜きの物件がございますの」


 また、アクセサリー店を・・・


 元々立地は良かった。

 何とか名店を集めて賃料を頂き。それで割賦代金を払う。手元にはいくらか残る。


 それぞれの若手を出して出店をしてくれたわ。


 また、流行を確かめる試作品を売る店にもなったわ。



 私は一軒屋で相変わらずに先生をしている。

 大人特化だわ。


 シジミ売り・・・すっかり遠ざかった。


「先生、何か玄関に貴公子が来ているぜ」

「まあ、もしかして・・・殿下?」


 元婚約者だわ。

「皆様、王子殿下ですわ。礼をして下さいませ」


「「「オウ」」」

「「「分かったわ」」」


 皆さんは私が教えた礼法をする。

 私はカーテシーとは違った平民の礼法をした。


 殿下は鼻をつまんで部屋の中に入ってきたわ。



「落ちぶれたな。だが喜べ。フランソワーズ、また婚約者にしてやる」

「・・・・・・」


 私は無言だ。


「どうした何故返事をしないか?」

「許可がない故に」


「さあ、こんな臭い奴らの相手をしていないで馬車に乗れ」

「殿下、汗臭いのは仕事の後故、この汗が税金となり殿下の生活を支えております」


「命令だ。馬車に乗れ」


 こんな傲慢な男だったのかしら。


「残念ながら私は平民でございます。平民には平民の法がございます。徴用するのなら法の根拠をご提示下さい」


 焦っているわね。何故かしら。


「父上からの命令だ!」

「これは異な事を。王命なら正式に下る前に調整が入り。官吏が恭しく文書を持って提示するもの」


「それは・・・」

「きちんと説明して頂かなければ、陛下からは私の自由意志で再婚約を結べば王族のままでいられる?と言われたと邪推してしまいます」


「何だと・・邪推に過ぎるぞ」

「何故なら、私は悪役令嬢と殿下が仰ったではないですか?」


「ならばどうすれば良い」

「シジミ売りを1年して頂きたいですわ」

「分かった。侍従に命じる」

「殿下、ご自身でやって下さいませ」



 結局、殿下は半日で帰られたわ。


 その後、貴公子達が求婚に着たが同じ条件を出した。


 しかし。


「フランソワーズ様。私に挑戦させて下さい」

「まあ、フランク殿下・・」


 二歳年下の第三王子だわ。


 1人で頑張っている。護衛騎士が遠巻きで見ているが・・・


「シジミを買って下さい!」

 根をあげずに平民にも頭を下げている。


 しかし、三ヶ月目に嵐がやってきたわ。


「殿下、お止め下さい!増水しています」

「やめたら、フランソワーズ様と婚約が出来なくなる!」


 これは元々無理な話だった。

 王国では必ず大雨が降り増水するときがある。



「殿下、もういいですわ。この試練は本気度を見るためのもの。目的は達成出来ましたわ」


「フランソワーズ・・・」

「しかし、私の後継者を用意して下さいませ」


今は王宮で第三王子の婚約者として過ごしている。

元婚約者と義妹は宮廷伯だわ・・・・


公爵家の整理が終わったら。

いづれ殿下と公爵家を継ぐ事になるだろう。



・・・・一度没落してからまた貴族に戻った公爵令嬢はそうはいない。

これは偶然なのか。それとも努力の賜物なのか?と賢者が議論をしたが。

偶然派は努力もある。努力派は偶然もあるとの結論づけられたと言う。




最後までお読み頂き有難うございました。

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