#4 冒険者の素質
ギルドに着いた俺は、カウンターで冒険者登録の手続きをしていた。
「それではそちらのステータス鑑定石に右手を置いてください」
受付嬢が柔らかな口調で促す。言われた通り手を置くと、受付嬢の方に俺のステータスウィンドウが開示されていた。
「Lv1、HP100、SP150...どれも冒険者の平均よりやや少ないですね」
そこまで言うと受付嬢が突如硬直した、かと思えば目を見開き、
「あれ?あれれれ?」
と慌てふためいている。
「だっ、大丈夫...ですか?」
「...Pが」
「え?」
「MPの部分がないんです!!」
「え、MP?」
「そうです。通常の人間なら多少なりともMPつまり魔力があるんですが、ハヤタ様にはその欄自体がありません...」
魔力が...ない?1ミリも?可能性さえもないのか?
「ってことはつまり...」
「そうです、お察しの通り魔法が使えません」
神妙な面持ちで説明する受付嬢に、俺は言葉を失った。終わった...俺の異世界生活...。スキルも"透明化"しか持てない、魔法も使えない、あまつさえ身体能力も人より低い。お先真っ暗だ...
どんよりとした雰囲気を払拭するように、受付嬢が明るく告げた。
「まっ、まぁ魔力なんてなくっても腕っぷしを鍛えれば冒険者になれますよ!」
なんだか適当に流された気がする...
「こちらがギルドカードです!ハヤタ様は冒険者になりたてなのでFランクからのスタートとなります。今後のクエストの達成数に応じてランクはアップしていくので頑張ってくださいね!」
可愛らしいガッツポーズを作った受付嬢に礼をいい、ソファに座っていたシニアの元へ歩く。
「どうだった?鑑定結果は〜」
「MPがないって言われた」
「MPがない?」
「あぁ、欠片もないらしい」
「そっか...でも魔法使わない冒険者なんて山ほどいるんだし、気にすることないって」
それに...と続けて、
「私を救ってくれた、あのすごいスキルがあるでしょ?」
そう言ってニコッと微笑む顔は俺を少しだけ前向きにさせた。そうだ、ないことを悔やんだってしょうがない。せっかくのセカンドライフを無駄にしてられるか。
「よし、何はともあれ装備は大事!ハヤタに合ったの買いに行くよ!」
俺より張り切っているシニアに手を引かれ、彼女イチオシの店を回ることになった。
しばらくしてから、武器屋・黒鉄亭に着いた。この店では気難しいドワーフの店主が1人で店を切り盛りしているらしく、店主と知り合いのベテラン冒険者しか来店しないらしい。でもなんでシニアが知り合いなんだ?
扉を開けると、誰もいない。
「テツゾウおじいちゃ〜ん?」
とシニアが呼ぶと、人間の子供より少し大きいくらいの体格のいい老人が顔を出した。
「ホホ〜誰かと思えばシニアちゃんか〜。よぉ来たなぁ」
のほほ〜んとした表情で出てきたテツゾウは全然気難しそうではない。
「今日は武器の整備かな?」
優しく問いかけるテツゾウに対し、シニアは首を横に振る。
「ううん、ちがうの。この人に合う装備を見繕って欲しくて」
「ほぉ?」
さっきまでの対応とはうって変わって、険しい表情を作った。顔に深く刻まれたシワがより鮮明になる。
「小僧、新米か?」
「はい、そうっす」
「悪ぃな小僧、うちは一見さんお断りなんだ」
「おじいちゃんおねがーい」
「ん〜どうしよっかなぁ〜」
チョロすぎるだろこのじーさん...シニアからのお願いだけでもう意見が揺らいでいる。
「...仕方ない、こん中から好きなのもってけ」
いとも簡単に武器をゲットできそうだ。試しに樽にさしてあるロングソードを持ってみる。
「!?」
重くて、持てない...?嘘だ、そんなはずはともう一度試みるが、武器が上がらない。人よりステータスが劣るってこういうことだったのか?
「フンッ...虚弱だな たかが新米ごときにワシの剣が扱えるわけなかろうて」
テツゾウが俺を嘲笑する。
「ちょっとおじいちゃん?ちゃんと選んであげてよ!」
「おーすまんなシニアちゃん...小僧そこで待っとれ」
そう言うと、テツゾウは作業場に入っていった。しばらく待っていると
「ほれ、これでどうじゃ」
そう言って手渡されたのは緑がかった古い短剣。
「それは疾風といってな、ワシが若い頃に打ったもっとも軽い短剣じゃ これなら虚弱な小僧でも持てるじゃろ」
「なんだかハヤタと名前が似てるわね」
クスッとシニアが笑う。
「小僧、ハヤタといったか...この短剣は確かに軽くて切れ味が良いが、一つ難点がある」
「難点?」
「そうじゃ。 疾風は風の魔石を混ぜて作った所謂魔剣なんじゃが、途中で魔石が足りんくなってのぉ...。モンスターに決定打となる一撃を与えられんのじゃ」
なるほど未完成の品を押し付けたわけか...
…このジジイ
でもこの短剣...不思議と手に馴染む。
「これください」
「ちょっとハヤタ?装備は冒険者の命綱といっても過言じゃないのよ?未完成の品は危ないわ!」
「いやシニア、これがいいんだ」
「でも...」
「こいつと一緒に成長したいんだ」
魔力も体力も大したスキルもない俺は、魔石が足りず未完成の疾風をどこか自分と重ねていた。
「テツゾウさん、風の魔石を持ってくれば打ち直したりとかできないすか?」
「ワシの腕にかかれば御茶の子さいさいよ...じゃが、風の魔石は相当のレアアイテムじゃぞ?」
俄然やる気が出てきた。当分は自己強化と装備強化に集中する必要がありそうだ。
「俺が必ずここに持ってきます」
「威勢だけはいっちょ前じゃな」
「おじいちゃん!意地悪言わないの!」
こうして旅の相棒を手に入れた俺は、シニアオススメの防具屋や服屋を転々とし、結局いちばん無難な旅人の服一式を購入。おまけに、回復薬や毒消し、麻痺直しなども一通り揃えた。
「何から何まで悪いな、シニア」
「いいのいいの!これから楽しい冒険者ライフが始まるんだから!それに、今日の初期費用は倍にして返してもらうわよ?」
「えぇ...?流石にそりゃないぜ...」
俺の異世界ライフ最初の目的は、自己鍛錬でも素材集めでもなく、多額の借金返済となった。
書き溜めているものがあるうちは毎日投稿したいと思います。今回も読んでいただきありがとうございました。




