特訓再開とギリ?合格点?
翌朝。
目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。5時25分。
「……起きれた」
もしかしたら、俺は朝型の人間なのかもしれない。覚えてないけど。
ジャージに着替えてマンションを出ると、真白と渚が待っていた。
「あ、日向くん!おはよう!」
「おはよう、真白」
「よし、じゃあ行こう!今日の走り込みはちょっと短くして昨日の公園までにしよう!おー!」
「おー」
少し距離が短くなったし、頑張れる気がする。
真白に続いて俺が走り出すと、渚が並んだ。
「なぁ、朝早くないか?」
「だな。でも、日向は起きれてるじゃん」
「そうじゃなくて、渚は?」
朝6時に俺の家の前集合ということは、真白と渚は俺よりも早起きをしている。
真白は特訓を始めた張本人だし朝からフルパワーで元気そうだけど、渚はそれなりにテンションが低くて眠そうな顔をしている。
そんな無理をしてまで、どうして付き合ってくれるんだろう。
「まぁ、少し、気になって」
渚は曖昧に答えた。
「日向くん、公園に着いたら昨日の続きだよ!」
「はーい」
「ファン対応の練習ね!その、あ、あ、握手会!握手会の練習もしようよ!将来に備えて!」
「なぁ、それは真白の趣味じゃないか?」
俺が突っ込むと真白は「きゃー!」と悲鳴を上げてスピードを上げた。朝から元気な奴だ。
公園で謎の握手会練習を終えて、また家に戻って学校の支度をする。
眠い、けどなんとか寝ないで登校できる。やっぱり早起きは健康にいいのかもしれない。
そんなことを考えていると一人で学校に到着してしまい、またいつものように人が群がってきた。
「ヒナくん、おはよー!」
「今日は一人?写真撮っていい?」
「ねぇ、今度さ遊びに行かない?」
でも、今日の俺は少し違う。
特訓の成果を見せる時だ。少しだけ笑顔を作って答えた。
「おはよう。写真は……また今度ね」
女子たちが「キャー!」と黄色い声を上げる。よくわからない。
囲まれたまま校舎に向かおうとして、少し離れた所に真白がいるのを見つけた。
俺が上手く対応できているのを見て、うんうんと深く頷いている。
後方彼氏面というより、強豪校の熱血コーチに見える。
その時、俺に駆け寄ってくる女子の一人が、立っている真白にぶつかった。
「明里、邪魔!」
鞄をぶつけられて、真白はよろけて地面に手を付く。
「ちょっとごめん」
俺は女子を掻き分けて真白の元に近づいた。
真白の腕を掴んで立たせると、俺を見て真白は驚いた顔をした。
「はわ?!日向くん、何してんの?!」
「あのー……だって、友達が転んでたら助けるのは当然だろ!」
俺は後ろの女子たちに聞こえるように大きな声で言った。
そして、反応が返ってくる前に真白の腕を掴んで、教室に向かう。
「日向くん、ヒナはみんなのアイドルなんだから、一人を特別扱いしちゃダメだよ!」
「駄目出しかよ……あのな、ヒナがアイドルでも、きっと友達は大事にするだろ」
「真白、日向くんの友達なの?」
俺に引っ張られながら、真白がきょとんと尋ねてきた。
改めて言うのが恥ずかしくて、真白に背を向けたまま俺は黙る。
多分、記憶があった時の俺は真白と友達だったんだと思う。
でも、今の俺だって真白と友達じゃなかったら朝6時から一緒に特訓したりしない。
真白が俺の後ろでうひひ、と照れ笑いしているのがわかった。
「まぁ、ファンにちゃんと笑顔で挨拶できてたのは、特訓のおかげだよね!80点かな!」
「80点かよ……厳しいなぁ」
辛口な採点にちょっと本気で落ち込んだけど、真白は嬉しそうに笑っていた。




