表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶喪失で隠キャな俺、大人気ネットアイドルだったらしく幼馴染と復活目指して特訓中  作者: 甘酢ニノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/7

特訓が、思ったより本格的な件

目覚まし時計が鳴る。午前5時30分。


「……うわ、マジかよ……起きれてしまった……」


俺はベッドから這い出して、部屋を見回した。

数日暮らしているけれど、まだ慣れない。

そこそこ広い部屋。綺麗に片付いているけど、どこか生活感がない。

記憶がないから当然なんだけど、自分の部屋なのに他人の家にいるような気分だ。


クローゼットを開けると、服が並んでいる。

全部俺にピッタリのサイズ。当たり前か。にしても多い気がするけど。

ランニングとか言っていた気がするから、適当にジャージを引っ張り出して着替える。

このマンション、結構いい物件らしい。リビングも広いし、キッチンも綺麗だ。

でも、一人暮らしには広すぎる気がする。寝室に使っている部屋以外にも部屋があるし。

まあ、ネットアイドルで稼いでたなら、こういう部屋に住めるのか。

ふと、廊下の奥に閉まったままのドアが目に入った。

あの部屋、まだ一度も開けてない。

何が入っているのか開けてみようかと思ったけど、なんとなく躊躇する。

鍵がかかってるわけじゃないけど、開けちゃいけない気がした。

まあ、いいか。

とりあえず今は真白との約束だ。玄関に向かうと、インターホンが鳴った。


「日向くん!真白だよー!」


モニターを見ると、ジャージ姿の真白が手を振っていた。

しかもストップウォッチとメモ帳を持っている。


「……マジで来たのかよ」

「当たり前じゃん!さあ、走るよ!」


真白は俺の手を掴んで、ずんずんと歩き出す。


「ちょ、ちょっと待て……」

「待たない!朝は時間が大事なの!」


マンションの入り口を出ると、もう一人、見慣れた姿が立っていた。


「渚……?」

「おはよう、尾張」


渚が淡々と挨拶してきた。こいつもジャージ姿だ。


「お前も来るのかよ」

「なんか、気になったから」

「渚くんね、真白が一人で日向を特訓するの心配してくれたの!優しいよね!」


真白が嬉しそうに言う。渚は複雑な顔をしている。

わざわざ早朝に来るほど心配するなんて真白のヤバさは有名なのかもしれない。

朝6時。何回確認しても、時計の針が180度の朝6時。

人間が活動するには早過ぎる。


「じゃあ、まずは軽くランニング!目標は3キロ!」

「3キロ!?朝6時から?!」

「何時だって3キロは3キロだよ!大丈夫大丈夫!ゆっくり走ればいいから!」


真白は軽やかに走り出した。渚もそれに続く。俺も仕方なく走り始める。

でも、10メートルくらいで息が上がってきた。100メートルを過ぎる頃には死にそうになる。


「も、もう無理……」

「日向くん、早くない?大丈夫?」


真白が振り返って、心配そうに見てくる。


「体力なさすぎではでは?」

「俺、ちょっと前まで入院してたんだけど……」

「あ、そっか!」


真白はぽんと手を打って、何かメモをする。


「じゃあ、無理させちゃダメだね。明日からはもっとゆっくり走ろ!」

「明日も……やるのか……」

「当たり前じゃん!毎日続けないと意味ないよ!」


真白はニコニコしている。悪気はないんだろうけど、この笑顔が怖い。


「明里さん、少しペースを落としてあげたら?」


渚が口を挟む。


「えー、でも早く復活させたいし……」

「焦っても仕方ない。尾張の体調が最優先だよ」

「うーん、そっか……真白、やりすぎかな……」

「いや、まあ……」


俺は顔を上げて、少しは平気なふりをした。


「真白が頑張ってくれてるのはわかるから」

「本当!?」


真白の顔がぱあっと明るくなった。


「じゃあ、これからも頑張ろうね!」

「ああ……」


本当は3キロ先にある自然公園まで行くつもりだったらしいけど、俺が無理そうだと気付いて途中の小さな児童公園がゴールになった。

フラフラになってベンチに崩れ落ちていると、朝日が昇り始めていた。

オレンジ色の光が住宅の隙間から照らしていた。


「いい朝だね!」


真白は空を見上げて元気に言った。地味で野暮ったい格好奴だけど、笑顔は本当に明るい。


「尾張、大丈夫?」


渚に尋ねられて、俺は首を横に振った。


「ダメだと思う……多分、体感でいうと10キロくらい走った……」

「いや、日向の家から1キロちょっとかな」

「無理だ……きっと、入院している間に体力も持久力も根性も無くなったんだ……」

「そんなこと言うなよ。体力と持久力は運動を続ければ戻るよ。根性は知らないけど」

「だいじょーぶ!!」


俺が渚に甘えて弱音を吐いていると、真白が大声で口を挟んでくる。


「絶対に日向くんを『ヒナ』として復活させるから!任せて!」

「……俺は、頼んでないし、別に復活しなくても……」

「ああ!!もうこんな時間!じゃあ後で学校で!」


真白は言うだけ言って、公園を駆け出ていく。

そうだ。この後に学校もあるんだ。帰って寝直したいのに。


「尾張、1人で帰れる?」


渚に聞かれたけど、俺はベンチに突っ伏して答えられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ