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記憶喪失で隠キャな俺、大人気ネットアイドルだったらしく幼馴染と復活目指して特訓中  作者: 甘酢ニノ


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1/8

なんか俺、学校で大人気らしい

目が覚めたら、記憶がなかった。


名前も、家族も、昨日の晩ご飯も、全部真っ白。

ただ一つだけ分かったのは、俺は「尾張日向」という高校二年生らしいということだけ。


医者は「記憶は徐々に戻るでしょう」とだけ言っていた。


でも誰も教えてくれなかった。俺が学校で、とんでもなく目立つ存在だったなんて。


「ヒナくーん! 」


校門をくぐった瞬間、甲高い声が飛んできた。見知らぬ女子生徒三人組がキラキラした目でこちらを見ている。

どっちかというとギャルっぽい派手な生徒。

本能的に苦手なタイプ。


「あ、おはよう……」


ぎこちなく手を振ると、三人は顔を真っ赤にして「キャー!」と黄色い声を上げた。


怖。

普通に挨拶しただけだぞ?


「本当にいるんだー!可愛い〜!」

「1人なの?ねー!一緒に教室行かない?!」

「あ、ずるい! 私も! ついでに、写真撮ってもいい? 」


わらわらと女子が集まってくる。ちょっと待て、これは何の状況だ。


「日向くん! おはよー!」


人混みをかき分けて、一人の女子生徒が飛び出してきた。

二つに結んだ肩くらいの長さの黒髪が、ぴょんぴょんと跳ねている。

清楚というか、どちらかというと野暮ったい感じの女子。


そして――やたらと距離が近い。


「ねえねえ、昨日のメッセージ見た? 既読スルーはダメだよ?」


ぐいっと腕を掴まれる。

うわ、近い。顔が近い。


周囲の女子たちから、明らかに敵意のこもった視線が刺さる。


「うわ、明里、まただよ……」

「ずるー……地味女のくせに」


幼馴染らしい。確かに馴れ馴れしい……いや、すごく自然に接してくる。まるで昔からずっと一緒にいたみたいに。


でも、俺は彼女のことを全く覚えていない。


「じゃあ、教室行こ! 」

「教室……て、どこ? 」

「……もー! 久々だからって忘れないでよ! 同じクラスでしょ! 」


同じクラス?

ということは、もしかして一日中この距離感なのか?



教室に着くと、またしても人が群がってきた。


「ヒナくん、おはよー! 久しぶりー! 」

「会えなくて寂しかったよー! 」

「ねぇ、今度一緒に動画撮ってー! 」


なんなんだ、この人気。俺はただの一般男子高校生じゃないのか?


なんとか自分の席にたどり着くと、隣から明里が顔を覗かせてきた。


「ねえ、日向くん。お昼休み、一緒に食べてもいい?」

「あ、うん……」

「やった! じゃあ、一緒に屋上行こうね!」


にこにこと笑う明里。悪い子じゃなさそうだ。でも――彼女の笑顔の奥に、時々寂しそうな影が見える気がする。


「尾張、大変そうだね」


背後から声がかけられた。振り向くと、背の高い男子生徒が苦笑いを浮かべて立っていた。

この可愛い系のイケメンは葉月渚。

記憶喪失後、最初に会った時に自己紹介してくれた同級生で俺の親友。らしい。


「……なんでなんだ? 俺、そんなにすごいことしたのか?」


小声で尋ねると、渚はちらりと周囲を見回してから耳打ちしてきた。


「本当に覚えてないんだ……昼休み、屋上で教えてやるよ」



昼休み。俺は渚に連れられて屋上にやってきた。


「お前が人気の理由、これ」


渚はスマホを取り出して、画面を俺に向けた。


動画サイトのページ。チャンネル名【ヒナ@秘密基地】。登録者数120万人。


「……は?」

「ヒナのチャンネルだよ」


渚が再生ボタンを押す。すると――


『みんな、こんにちは! ヒナだよ!』


画面の中で、俺がVサインを決めていた。キラキラした照明、爽やかな笑顔、そして歌って踊る俺。


歌が終わると、画面の中の俺はカメラに向かって囁いた。


『みんな、今日も来てくれてありがとう。君たちがいるから、僕は歌える』


そして――ウインク。


「――っ!?」


俺は思わず渚のスマホを奪い取った。


「待て待て! これ、本当に俺なのか!?」

「半年前まで、ヒナは毎週動画を上げてた」


震える手で画面をスクロールする。動画一覧がずらり。どれも再生回数は数十万回。コメント欄には「ヒナくん可愛すぎる!」「結婚して!」と絶賛の嵐。


次の動画が自動再生された。今度は、至近距離でカメラを見つめる俺。


『ねえ、君。今日も一日、お疲れ様。辛いことあった? 僕に話して? 僕は、君の味方だからさ』


優しく微笑む画面の中の俺。


「ッッッ――――」


俺は、その場にうずくまった。


「やめてくれ。もう見せないでくれ」

「いや、でも理由を知りたいんじゃないか?」

「知りたかったけど、こんなの知りたくなかった!」


嘘だ。あんな恥ずかしい動画を、俺は全世界に公開していたのか? しかも120万人の登録者?


「これ、学校のみんなも知ってるのか?」

「ああ。ヒナのファン、学校にめちゃくちゃ多いよ。高校生に人気だし」

「だからあんなに群がってきたのか……」

「そう、超有名人なんだよ。ネットアイドル『ヒナ』として」

「う、………うわあああああああああああ!」


俺は空に向かって叫んだ。


記憶がなくて良かった。

いや、今、動画を見てしまった記憶すら消し去りたい。

こんな黒歴史、思い出したくない。

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