43
片山を信頼する啓太。
竹田はまだ片山のことで言わなければならない重要なことが一つあったが、純真な啓太を見ていると、とても話す気にはなれなかった。
『沙織梨を救ってやってくれ、啓太くん』
『大丈夫だよ、竹田さん。手掛かりは?』
ひたむきな啓太の心に竹田はいつしか引き寄せられていた。
『手掛かりはおそらくただ一つ。沙織梨の実家のあった場所じゃ。全焼して今は荒れ地になってしまっているがのぅ。だがここから探し出すしかない』
今まで黙って聞いていただけの信二だったが、率先的に尋ねてみた。
『その実家があった場所はここから遠いのですか?そして広いのですか?』
『場所はそう遠くはないが土地が広すぎる。ゆうに三千坪はある』
『地主か何かだったのですか?』
啓太の問い掛けに竹田は返答する。
『父は酒蔵の社長だった。祖父の後を引き継いだのじゃ。長男が病気で急死した為に次男であった父にまかされた』
竹田は寂し気な目で語り続けた。
『後を引き継いでまもなく、父は好き放題の生活を送った。酒と博打と女の日々じゃ。仕事は母に任せきりだった。ある日、嫌気がさした母は忽然と家を飛び出したのじゃ』
啓太と信二は何が何でも沙織梨さんの為に残りの剣山を探すことしか頭になかった。
7体の地蔵からはまるで加藤沙織梨の霊が、成仏出来ずに浮遊しているかのようにも見えて、三人は極度の疲労に支配された。
竹田は精魂込めて話しを続けた。