41
竹田の話しを続けた。
『沙織梨は十八歳の頃に、父親の不始末から起きた火事が原因で死んでしまった』
次々と明かされる沙織梨の過去に、啓太は驚きと胸の痛みを堪えることが出来ずにいた。
『沙織梨の父は大の酒好きで、その日も酷く酔っていた。酒が原因で沙織梨の両親は喧嘩が絶えなかった。沙織梨とは母は違うが、わしと同じ父をもつ兄妹なのじゃ』
啓太と信二は声が出せず黙って聞いていた・・・聞くしか出来なかった。
『その日はいつもより酷く酔っていた父は、母を狂ったように殴った。母に付き添うようにいた沙織梨まで殴られた。そして気を失ってしまった』
竹田は黙々と話しを続ける。
啓太と信二は心臓の鼓動を抑えながら竹田の声に耳を傾けた。
『それから父はガソリンを家中にまいて火をつけた。みるみるうちに火は家中を焼き尽くし、母と沙織梨は不幸にも死んでしまった』
『・・・沙織梨は義母と同じで花がとても大好きだった。花を見ている時の幸せそうな顔は今でも覚えておる』
啓太の目からうっすらと涙が溢れ出していた。
信二も目を潤ませていた。
『すべて焼き尽くされ、わしの義母も沙織梨も命を落としたが皮肉にも父だけが助かった』
啓太は渾身の力を振り絞り、尋ねた。
『竹田さんの実母はどうしたのですか?そして沙織梨さんの父はその後、どうなったのですか?』
『実母はわしが五歳の頃に家から出ていった。その後、父は再婚して沙織梨が産まれた。やがてわしは実母に引き取られた。わしの父は行方をくらました。だが三年ほど経過しただろうか・・・あるダムで変死体で発見された。死因は分からず仕舞いだった』
『そうだったのですか・・・』
啓太は深い溜息をつく。
そしてしばらくして問いかけた。
『やはり高台と沙織梨さんは関連性があったのですね』
『そして啓太の言う通り剣山もな』
信二はそう言葉を発して啓太の肩を叩く。
『何故、剣山をすべて集めたら成仏出来るのですか?あと一つ竹田さんはどうして沙織梨さんが成仏出来ずにいたことを知っていたのですか?』