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『啓太、お前の言うとおりだ。この爺さん、何か知ってるぜ。片山といい、この爺さんといい、おかしいぜ』
啓太は竹田に尋ねた。
『竹田さん、差し支えないようでしたら、知っているすべてを話していただけませんか?』
竹田は一瞬だけ、景色をぐるりと一望した。
『僕は毎日、カトウサオリさんのことが気がかりでした。苦しそうに悲しそうに僕を呼ぶ声。だからこそ剣山をすべて集めてサオリさんを自由にしてみせます』
啓太の真剣な話し方を聞いているうちに、竹田は白い杖をついて立ち上がった。
『啓太くん、そんなにカトウサオリという女性のことが心配かね?怖くはないのかね?』
『怖くないです。寂しそうな声。必ず僕がサオリさんを楽にしてあげるんだ』
『今も剣山は捨てずに持っていると言ったね』
『はい、僕の部屋にあります』
竹田は啓太を信じた。
自分のことのように心からカトウサオリのことを思ってくれる啓太に対して心を開いた。
そして竹田はついに、カトウサオリに関する過去の忌まわしき事件について語る決心をする。
『啓太くん、きみの気持ちに嘘はないようだ。わしはきみを信じるよ』
竹田は地蔵の方向へと歩き景色を眺めながら、カトウサオリのことをぽつりぽつりと話し始めた。
『加藤沙織梨はわしの腹違いの妹じゃ』
啓太と信二はこの時、身体中に震えが生じるのを覚えずにはいられなかった。
『この地蔵はのぅ、沙織梨を供養するためのものじゃ』
啓太と信二は動揺を隠すことが出来ないまま、竹田の話しに耳を傾けた。
『何故、沙織梨がきみの前に現れたか分かる。きみは純粋で真っ直ぐな青年だ。きみなら大丈夫だと安心したのだろう。わしの望みはただ一つじゃ。沙織梨の霊を成仏させてやりたい』