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『カトウサオリさんが剣山を探してほしいって僕に・・・。高台って言葉も口にしていました』
竹田は白い長い杖を二度、地面に叩きつけて啓太に言った。
『その剣山はどこにあるんだね』
『五つだけ、僕の部屋にあります』
竹田はさらに問いつめた。
『カトウサオリと言ったね。そんなに苦しそうにしていたかね?』
『はい。そしてとても悲しそうでもありました』
竹田は手招きでふたりを祠の横の丸太作りの椅子に座らせた。
そしてまた口を開いた。
『片山と名乗る男も剣山とカトウサオリのことで、わしを訪ねてきよった』
啓太と信二は顔を見合わせた。
『片山さんが?』
信二は竹田に聞いてみた。
『片山さんとはいつ会ったのですか?』
『ニ週間ほど前かのう』
啓太は信二に言った。
『片山さん、そのことを何故、話してくれなかったのだろう』
『啓太、片山って男、うさんくせぇぞ』
『良子さんの紹介だよ。まさか、そんなことあり得ないよ』
『とにかく本人に直接聞くしかねぇか』
竹田はふたりに言う。
『片山という男を君たちは知っているのかね?』
『はい、知っています。良子さんっていう女性の友人です』
竹田は直感で啓太のひたむきさに信頼を感じずにはいられなかった。
そしてすべてを啓太に話そうと決意した。
竹田は啓太の話しを聞いているうちに、過去の忌まわしき出来事がいまだに存在し、浮かばれずに霊として現世を彷徨っているのだと確信した。
竹田は深い溜息をついて、7体の地蔵を見つめ涙を流した。
啓太には何故、竹田が涙を流しているのか、はっきり理解出来ずにいる。
信二は啓太に、ひそひそと耳打ちで話しをした。