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隆太はこの一連の出来事を集まってくれた人たちに話した。
信じがたいことではあった。
だが、事の真相を知った住民や信二の大学の仲間たちも、啓太を思うと涙を堪えることなど出来なかった。
隆太が二人の元へ走る。
『啓太、京子ちゃん。お前ら輝いてるぞ。みんなで見届けてやるから必ず探し出せ』
隆太の顔を見て、にっこり笑って頷く啓太。
啓太は自然に込み上げては流れる涙を拭おうとはしなかった。
そして時間は流れゆく。
啓太の掘った土の中から剣山の先らしき針が数本見えた。
京子の方を一瞬、見やり、息を飲んだ。
見守る人たち。
啓太は剣山を手に取り、覚悟を決めてイニシャルを確認した。
最後の一つ「I」の文字がはっきりと刻まれていた。
啓太は京子の手を握りしめ、空を見上げた。
『沙織梨さん、長い間、辛かったよね。全部そろったよ、全部』
啓太は振り向き様、みんなに伝えた。
『みんな、ありがとう。やっと全部そろったよ。これで沙織梨さん、ようやく成仏出来るよ』
住民たちも辛い気持ちをかき消して喜んだ。
それぞれが啓太に声援を送る。
啓太の目先に居る隆太。
『啓太、お前なら大丈夫だ』
『うん、隆太さん。これから高台へ行って最後のやるべきことをしてくるよ』
『あぁ』
啓太は十個の剣山を抱え、京子とふたり、高台へと向かう。
『京子、高台へ行こう。祠に安置したら沙織梨さんは成仏できるから』
『うん、啓太くん』
ふたりはしっかりと手を繋ぎ歩き出した。
みんなはふたりの姿が見えなくなるまで見送った。
信二の声が聞こえる。
『啓太〜、お前なら乗り越えられるさ』
啓太は信二の言葉を背に受けながら、高台へと向かってゆく。
はち切れそうな胸の痛み、京子の手の温もり、啓太はじっと耐えていた。
先ほどまでの太陽の光も次第に赤褐色の夕焼け空へと姿を変えていく。
高台へと到着したふたり。
啓太は京子を見つめ、口を開いた。