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『お〜い、見つけたぞ』

また一つ剣山が見つかったようだ。

イニシャルを確認する啓太の表情はどこか寂し気だった。

啓太にはもう見つかってほしくないという思いまで込み上げていた。

『おじさん、ありがとう。イニシャルは書いてあるよ。「O」という文字だよ』


歓喜するみんなとは別に、京子との別れが近づいている予感に、啓太の心は苦しみで溢れている。

これまで過ごした京子との日々が蘇る。

初めてデートを交わした日から今日までのすべてが走馬灯のように駆け巡る。

啓太は急に丘の上を目指して走り出して大声を張り上げた。

『みんな、ありがとう。感謝してるよ。我儘だけど最後の一つは僕が探したいんだ』


みんなの代表として隆太が啓太に問いかける。

『ここまでみんなで探したんだ。あと一つもみんなで探した方のが早い。一体どうしたんだ?啓太』

『ごめん、理由は必ず話すから。今は僕の我儘を聞いてほしいんだ』

啓太は悲壮な表情で隆太を見つめた。


『わかった。啓太、お前のことだ。何か事情があるんだろう。好きにしろ』

『ありがとう、本当にごめんね、隆太さん』

『みんなのことは任せておけ』


ほんの少しだけ、雨がぽつりぽつりと降ってはすぐに止んだ。


どうやらみんなも理解してくれたらしく、啓太の思いを受け入れてくれた。

誰一人帰ろうとせず、啓太を見守った。

啓太は一人、懸命に探し続けた。

しばらくすると京子がやって来た。

『啓太くん、私も探すよ』

『京子』


啓太と京子は一緒になって探した。

良子はそんな二人を見て、少しでも片山の話しに乗ろうとした自分自身が許せずにいた。

良子は片山と口論になる。

その様子を見ていた信二は力の限り、片山をぶん殴った。

隆太も駆けつけ、すべてを聞いた。

隆太もまた片山を殴る。

そして片山の持っていた剣山を取り上げた。


片山は頭を深々と下げて謝罪した。

兼崎に話した京子の悪い噂もでっち上げだと認めた。

遠くから一部始終を見ていた竹田は後悔していた。


『啓太くんの優しい気持ちと強い心、わしはもっと信じてやるべきだった。啓太くん、すまない。そして心からありがとう。きみがそこまで沙織梨のために力を発揮出来るとは思わなかった。片山など必要なかった。わしを許してくれぃ。啓太くん、沙織梨を沙織梨を成仏させてやってくれぃ』



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