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『あなたって卑怯よ。どうしてそんなことを・・・それに本当のことを話してあげた方が啓太くんのためなのよ』
『啓太くんはあの性格だ。話すにはまだ早い』
『片山くん、もしかして、やっぱりまた何か企んでいるわね。私にも話せないこと』
『確かに俺の調べたことは啓太くんも知っている。ただし、あることを除いてだ』
『あることって何?』
『良子、取り引きしようじゃないか、お前も叩けばほこりの出る体だ。悪い話しじゃない』
『でも私には啓太くんを裏切る真似だけは出来ない』
片山はスーツの上着の裏ポケットから煙草を取り出して一息吸った。
『何も裏切れとは言わない。ほんの少し俺の話しに合わせてくれたらいいだけだ』
『嫌よ、私には出来ない』
『お前は啓太くんを裏切ることになると思っているようだが、結果として救う形になるから安心すればいい』
『・・・』
『どういうこと?』
『良子、お前には多額の借金がある。俺が代わりに払ってやろう。条件は一つ。啓太くんが集めた剣山をすべて俺に渡してほしい』
『剣山とお金にどんな関係が』
『竹田という老人と取り引きをした。加藤沙織梨の実の兄だ。母親は違うがな』
『ということは・・・』
『そう。竹田は身寄りのない老人。死んだら莫大な金が残る。竹田は加藤沙織梨を成仏させたいがために生きている。一億円と剣山十個との交換に彼は応じたよ』
『あなたってお金のことしか頭にないのね』
『どうする良子。お前が黙って引き受ければ問題ないことだ。啓太くんに被害は及ばない』
『さっき言ったわね。一つだけ啓太くんが知らないことがあるって』
『あぁ』
『それを教えてくれたら取り引きに応じるわ』
『本当だな。なら話してやろう』
昼の休憩も終わり、再び剣山探しの作業が開始された。