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良子は周囲を見渡して、啓太を探した。
良子と片山に手伝う気はないようで、二人ともスーツ姿で現れた。
啓太を目にした良子が囁く。
『啓太くん、どう見つかった?たくさんの人たちが集まってくれたのね。良かったじゃない』
『うん、そうなんだ。でもまだ見つからないけど、これだけの大人数なんだ。きっと見つけてみせるさ』
啓太は勢いづいていた。
普段の控え目な性格とは見違えるほどだった。
『京子さん、疲れていない?少し休んだら?』
『大丈夫よ。私はこう見えても頑丈なんだから。学生時代、陸上をやっていたから』
『ははは、そうだったね。僕より頼れるってこと忘れていたよ』
日差しは少し暑さを強めた。
『まじ、ひとつも出ないよな。ほんとに見つかるのかよ』
暑さが追い打ちをかけたのか、信二が文句を垂れていた。
そんな信二を久美子がなだめている。
『一番誰よりも張り切っていたくせに情けないわね』
さすがの信二も強烈な一言に参ったようで、再び懸命に掘り始めた。
そんな時だった。
『あったぞ〜。発見したぞ〜』
町の住民の一人が剣山を掘り出した。
みんなが一斉に駆けつける。
『おお、でかしたな』
『やったじゃないか』
歓喜の声が現場を包み込み、よりいっそうみんなのやる気に拍車を掛ける。
啓太もスコップを放り投げて一目散に駆けつけた。
『おじさん、ありがとう。ちょっと見せて下さい』
啓太は剣山を手に取り、軍手をはめていた両手で汚れを丁寧に拭き取った。
そしてイニシャルの確認をした。
啓太はアルファベットを発見するなり、飛び跳ねて喜んだ。
その剣山には紛れもなく加藤沙織梨のイニシャルの文字のひとつ「T」と記されていた。