命に優劣なんてない
地方都市の医療過疎地で突如起きた地滑り災害。
通信が寸断され、孤立した診療所に2名の重症患者が残されているという情報が入り、
MORUとNEPTが合同で現地に派遣される。
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診療所内にいたのは:
•32歳の妊婦(妊娠8か月/腹部圧迫による胎児機能不全・大量出血)
•85歳の男性(心不全+骨盤骨折・低酸素血症)
どちらも搬送と手術が必要だが――
Y-01に搭載できる救命用ベッドは1台のみ。
もう一人は、道路の回復を待つしかない。
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NEPTの南雲は、即断する。
「妊婦を搬送します。胎児も含め、2つの命。優先順位は明白です」
だが、MORUの柊が反論する。
「でも、あの男性は酸素投与で落ち着いてきてます!
ここに残すにはリスクが高すぎる!」
神崎は、患者たちを一人ひとり見つめていた。
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そのとき、妊婦が神崎の手を握り、微笑む。
「先生……私は残ります。
このお腹の子は、絶対に元気です。
だから、あのおじいちゃんを連れていってあげてください」
NEPT側は驚き、制止しようとする。
南雲:「あなたが残れば、母体も胎児も危険になります」
神崎は、妊婦の手を握り返す。
「あなたの覚悟は、命を諦めることじゃない。
“誰かを生かす”という、もうひとつの命の選び方だ」
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Y-01は高齢男性を搬送、Y-01内で安定化。
その間に、神崎は妊婦に緊急の輸血管理と帝王切開の準備を整える。
数時間後、道路が復旧。ヘリ搬送と連携して妊婦も救出される。
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後日、神崎たちのもとに、一通の手紙が届く。
「あのとき助けてくれて、ありがとう。
私たち親子も、あのおじいちゃんも、みんな元気です。
命に優劣なんて、やっぱりありませんでしたね」
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神崎は手紙を読み終え、ぽつりとつぶやいた。
「選ばなかったわけじゃない。
選ばせなかったんだ、命に優劣なんて」