チーフの責任
女将の心肺蘇生を強行した件が、ネットと報道で拡散された。
──「家族の意思を無視した延命処置」
──「自己判断が過ぎる医師」
──「現場独裁」
MORUへの批判が噴き上がる中、神崎は一言も反論せずに診療を続けていた。
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蒼鷹総合病院では緊急の倫理委員会が開かれ、
外部の弁護士や医療顧問たちが、神崎の判断について質す。
委員:「患者のQOLを考慮せず、ただ生き延びさせるのは医療ではありません」
委員:「あなたは感情で動いたのでは?」
神崎:「あの患者の心臓は、まだ動いていた。
それが、あの時の“意思”でした。
俺が責任を問われるなら、それで構いません」
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委員会後、チームにも動揺が広がる。
柊:「オレ……本当は、あの時怖かった。
もしあのまま死んでたら、チーフのせいにされてたかもって……」
サーシャ:「でも、生きていた。
だから、あの判断は間違ってなかったと思う」
日向:「俺はあの瞬間、あの部屋に“命の声”が聞こえた。
あれが現場ってもんだろ」
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そんな中、嶋崎院長が神崎を静かに呼び出す。
嶋崎:「お前が責任を背負おうとするのは、分かる。
だがな、背負いすぎれば、チームは崩れるぞ」
神崎:「それでも、俺がやらなきゃ」
嶋崎:「……その“空白の一年間”で、お前が何を見てきたかは聞かない。
だが、MORUは一人でやるもんじゃない。
チーム全員で責任を持って、全員で命を救う――それが俺の教えだ」
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翌日。神崎はチーム全員をY-01前に集める。
「俺の判断で迷惑をかけた。だが、俺は間違ってなかったと思ってる。
それでも、俺のやり方に疑問があるなら、正直に言ってくれ。
次から、変える」
沈黙のあと、柊がポツリと。
「変わらなくていいっすよ。
だって……あの患者、生きてんじゃないすか」
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MORUの面々が、静かに頷いた。
神崎は深く息を吐き、ようやく言葉にした。
「ありがとう。……これからも、“誰も死なせない”。その覚悟でいく」