誰が“最初”に助かるべきか
一時避難所となっている市民体育館で、深夜に二酸化炭素中毒事故が発生。
老朽化した暖房設備の不具合により、密閉空間で一酸化炭素と二酸化炭素が充満。
複数の被災者が意識障害を起こし、救命が急がれる事態となった。
MORUチームとNEPTがそれぞれ現場に到着するも――
使用可能な人工呼吸器は1台のみ。
倒れているのは、
•中学生の女子生徒(重度意識障害・呼吸停止直前)
•心疾患を持つ60代男性(既往歴あり・呼吸不安定)
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NEPTの南雲は即断する。
「人工呼吸器は高齢男性へ。
予後が比較的安定しており、回復が見込める」
柊が声を上げる。
「でも、中学生ですよ!? 将来があるんです!」
南雲は冷静に答える。
「感情ではなく、確率で判断する。それが国家医療の責任です」
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神崎は一瞬黙り、患者を見つめる。
その目は、かつて一度も“確率”で命を切り捨てなかった目だった。
神崎:「予後がいいから? 確率が高いから?
そんなもんで、俺たちは命を選ばない」
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神崎は呼吸器を中学生に接続するよう指示。
Y-01内で人工換気を開始し、同時に男性には高流量酸素療法と薬物療法を開始。
真野:「ダブル救命……リスク高いけど、やる価値はある」
柊:「絶対、両方助ける……!」
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緊迫した処置の末、
女子生徒は数時間後に自発呼吸を取り戻す。
さらに、男性も薬物治療で徐々に回復傾向を示し始めた。
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母親に抱きしめられた女子生徒がつぶやく。
「……ありがとう、って……伝えたかった……」
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神崎は呟く。
「誰が“最初”に助かるべきかなんて、
俺たちに決められるもんじゃない。
“誰も死なせない”ために、全力を尽くすだけだ」