命の基準
感染症集団発生の現場では、MORUとNEPTの協力が求められていた。
だが、協力とは名ばかり。現場では価値観の衝突が起きていた。
NEPTのリーダー・南雲は冷静に言い放つ。
「私たちは“助けられる命から助ける”。
それが多くを救う唯一の方法です」
一方、神崎は静かに反論する。
「“助けられる命”じゃない。
“今ここにある命”を助ける。それが俺たちMORUだ」
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現場では、感染症による呼吸不全を起こした6歳の少女・ミナが搬送されてきた。
酸素飽和度は低く、意識も混濁。人工呼吸管理が必要な状態だった。
だが、NEPTの判断ではミナは「予後不良」――優先度は低く、保留対象とされた。
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柊:「そんな……生きてるのに、後回しにするんですか?」
南雲:「予測では回復の可能性が極めて低い。
他の患者に資源を回すべきです」
神崎は一言、はっきりと言った。
「俺がやる。Y-01で管理する。
たとえ1%でも、生きる可能性があるなら、俺たちは動く」
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Y-01に少女を搬入し、MORUチームが治療にあたる。
真野は的確な呼吸管理を行い、日向は点滴と薬剤投与を調整。
柊の手は震えながらも、吸引とモニター管理を必死に支えた。
数時間後――少女の呼吸は安定し始めた。
柊:「……戻ってきた。ミナちゃん、生きてる」
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神崎は静かに南雲に伝えた。
「生きるかどうかを“予測”するのは医者じゃない。
“生かす努力”をするのが、俺たちだ」
南雲は何も言わず、その場を去った。
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夜。ミナの母親が泣きながら頭を下げる。
「誰もが諦めていたのに……ありがとう、先生たち……」
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神崎はメンバーに言った。
「命の基準は、医療の中にあるんじゃない。
それは、目の前の“生きたい”という声の中にある」