ただいま、蒼鷹へ
半年におよぶ国際災害医療支援から帰国したMORUチーム。
朝の蒼鷹総合病院は、いつものように慌ただしくも穏やかな空気が流れていた。
だが、神崎の顔は晴れなかった。
神崎:「……どこか、息苦しい。現場が、止まって見える」
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一方、柊は久々の病院勤務に緊張しながらも、
日向と真野の冗談に笑い、ようやく日常を取り戻しかけていた。
だが、その日。神奈川県内の地方都市で、
原因不明の急性呼吸器症状が集団発生したという速報が入る。
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感染症対策室が即座に稼働し、
神崎たちは現地へY-01で向かう準備を進める。
ところが、現地に到着したチームの前に、
黒と白の制服を着た別の医療チームがすでに活動していた。
サーシャ:「……この人たち、誰?」
柊(警戒気味に):「民間? いや、これは――」
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男が名乗る。
「私たちは**国家救急医療機動部隊・NEPT**です。
これより感染制御と搬送は、国家主導で行います。
貴院の独自部隊による介入は、制限対象とさせていただきます」
神崎:「……現場は、国の“計画”よりも一秒一秒が命を奪う。
この場に立たずして、何がわかる」
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だが、NEPTは冷静に医療プロトコルを掲げ、
「救命優先順位」に基づく行動を徹底していた。
彼らは**“助けられる命から助ける”**ことを原則にしており、
状態の悪い高齢者は、後回しにされていた。
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神崎は思わず声を荒げる。
「“優先順位”で命を分けるな。
俺たちは、“目の前の命”を助けるためにここにいるんだ!」
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その声に、運ばれそうになっていた老女が涙ぐむ。
「先生……ありがとうね。誰かが、“自分は生きていい”って言ってくれるだけで……」
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緊張が走る中、神崎とNEPTの司令官・**南雲**はにらみ合い、
新たな“医療の在り方”を巡る戦いの幕が静かに上がる。