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元天才子役の男子高校生、女装をして、女優科高校に入学する。  作者: 三日月猫@剣聖メイド1〜4巻発売中!
花ノ宮香恋ルート 舞台の上の怪物、天才子役の復活

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花ノ宮香恋ルート 第15話 攻撃開始の狼煙



「それじゃあ、楓ちゃん、またね。あ、玲奈ちゃんのことは任せて!」


 玄関先で靴を履き終えると、そう、背後から恵理子さんに声を掛けられる。


 振り返ると、そこには、恵理子さんと穂乃果の姿があった。


 穂乃果は何処か心配そうな表情を浮かべると、オレへと駆け寄って来る。


 そして―――オレの胸元に、盛大にダイブしてきた。


「え、ちょ、穂乃果さん!?」


「お姉さま。穂乃果には……お姉さまの戦いをお傍で見守る力も、資格もありません。ですが……穂乃果はいつだってお姉さまの味方です。何かあったら、いつだって私を頼ってくださいです……!! 穂乃果はどんな道を歩もうとも、お姉さまの味方ですから……!!」


 そう口にして、潤ませた瞳でオレを見上げてくるお団子少女。


 この少女は、いつもオレの傍にいてくれて、如月楓を支えてくれたっけな。


 花ノ宮女学院に入って、彼女と過ごしたあの眩しい日々は……いつの間にかオレにとって、かけがえのない宝物になっている。


 花ノ宮女学院の生活には、いつも、柊穂乃果という少女の眩しい笑顔と共にあった。


 彼女がいたからこそ、オレはこの女装生活も、楽しく過ごすことができていたんだ。


「ありがとうございます、穂乃果さん。如月楓という偽りの女優を愛してくださって」


「偽りなんかじゃないです。楓お姉さまは……楓お姉さまは、ずっと私の憧れの女優なのですよぉう!!」


「嬉しいです。私と友達になってくれて……ありがとう」


「お姉さま……お姉さまぁぁぁぁぁ!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」


 わんわんと泣きじゃくる穂乃果。


 誰しもいつかは必ず、制服を脱ぐ時がやってくる。


 如月楓にも、当然、やってくる。


 別れというものは、生きている限り誰しもにやってくる。


「……あの、楓、さん!」


 ぐすぐすと鼻を啜る穂乃果を宥めた後。


 恵理子さんの隣に立っていた幼い少女が、オレに声を掛けてきた。


 彼女は確か……穂乃果の妹の、(アカリ)、だったか。


 小学生半ばくらいの少女が、オレを、緊張した面持ちで見つめている。


 穂乃果に断りを入れた後、オレはしゃがみ込み、少女へと視線を合わせた。


「アカリさん、でしたよね。何でしょうか?」


「あの、私、お姉ちゃんの出た劇の録画を見たことがあるんです。えっと、それで……」


 もじもじとするアカリ。そんな彼女の様子にクスリと笑みを溢した後、穂乃果は涙を拭うと、口を開いた。


「この子、お姉さまの演技に感動して、将来花ノ宮女学院に行くんだー、って、いっつも言ってるんですよぉう。まぁ、楓お姉さまのあの演技を見たら、当然かもしれませんね」


「あの……楓さん。私、楓さんのように、舞台の上でキラキラと輝く女優になりたいんです。私も、楓さんのようなかっこよくて綺麗な女優に……なれますでしょうか?」


 そう、不安げな様子でオレを見つめてくるアカリ。


 オレはそんな彼女の頭を優しく撫で、声を掛けた。


「なれますよ。アカリさんは、今、何歳なのですか?」


「十歳です」


「でしたら、十六歳になって、花ノ宮女学院の女優科に入学できたその時。アカリさんの演技を私に見せてください。もっとも、その時の私は、役者を辞めているかもしれませんがね」


「そんなことはないです!! 楓さんは、世界に名を残す女優さんです!! 絶対に!!」


 そう言って鼻息を荒くするアカリ。


 ほんわかとしているどこか天然の入った穂乃果とは違い、どうやら彼女は、とても真面目な性格をしているようだ。


 オレは微笑を浮かべたまま、小指を突き出し、アカリに言葉を放つ。


「役者の世界は厳しいものです。ですが、人との出会いを重ねて、努力を積み重ねれば、きっと、華が開く――――貴方の演技をいつか私に見せてください、柊灯さん」


「はい!!」


 キラキラと、眩しい笑顔を浮かべたアカリという名の少女と、オレは、指切りを交わした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――――翌日。早朝午前六時。


 まだ日が暗い内からキャンピングカーで荷作りをしていると、ベッドで横になっているルリカが起き上がった。


 彼女は目を擦りながらオレを見つめると、首を傾げる。


「おにぃ、どうしたの、その荷物。どこかに行くの?」


「あぁ、ルリカか。ごめんな、ちょっとお兄ちゃん、東京にスパイしに行ってくるわ」


「は……? ごめん、ちょっと言っている意味が分からない……」


「昨日、色々あってな。香恋は今入院していて、玲奈は今、柊家で世話になってる」


「いや、ごめん、まったく状況がつかめない。ルリカが寝ている間にいったい何があったの?」


 目をグルグルとさせて混乱するルリカ。オレはそんな彼女に、昨日起こった出来事を詳細に話していった。





「香恋さんが倒れて入院って……大丈夫なの!?」


「多分、な。昨日少し話せたが、本人的には心配はするな、ということだ」


「えぇ……。それと、恵理子さん? って人から聞いた、お父さんの話もびっくりなんだけど。というか……その場にいたのが玲奈なのが、ちょっと、私的には納得いかないかな。そりゃ、元々秋葉家の子供である私は、確かにおにぃの本当の妹じゃないよ? 本当の妹じゃないけど……なんか、仲間外れにされた感がして、やだ。柳沢楓馬の妹の柳沢瑠璃花は、世界でも私一人なんだけど!!」


「あぁ、怒らないでくれ、大天使ルリカエル!! オレにとっても妹はお前だけだ!!」


「じゃあ、ギューッってして、お兄ちゃん」


「うん。そりゃいくらでも。ギューッ」


 ルリカに近付いたオレは、彼女を強く抱きしめる。


 するとルリカは顔を緩めて、「えへへ」と可愛いらしく笑みを溢した。


「おにぃ、ルリカのこと、好き?」


「うん、大好き」


「えへへへへへ~、ルリカもー」


「――――――何やってるんですか、貴方たちは」


「はっ!!!!」


 背後を振り返る。するとそこには、オレたち兄妹をドン引きした様子で見つめている、玲奈の姿があった。


 玲奈は引き攣った笑みを浮かべながら、再度、開口する。


「血が繋がっていないとはいえ……今まで兄妹として過ごしてきたんですよね、貴方たち。いや、はっきり言ってそれ、普通に気持ち悪いですよ? かなりドン引きです……」


「……玲奈さん? オレはね、そういう邪な気持ちでルリカを見てはいないよ? これは、単なるスキンシップであって――――」


「ごめんねぇ、玲奈さん~。おにぃとルリカは、兄妹とかいう枠組みを超越した存在だからさー。まぁ、玲奈さんには分からないよねー、実妹だもん。これは、義理の妹という特別な存在だからこそできることなのだ!! ワッハッハッハッ!!」


「うん、馬鹿そうに笑い声を上げるルリカエルも可愛いな。……もうじき東京に発つし、寂しくならないように写真を撮っておくか。パシャパシャ」


「馬鹿兄妹ですか? 貴方たちは」


 玲奈は呆れたため息を溢し、肩を竦めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「……香恋さまとルリカさんのことは、玲奈にお任せください。兄さんは当初の予定通り、花ノ宮有栖陣営の偵察を。とはいっても、無理はしないようにしてください。もし、勘付かれそうな気配を感じたら、即座にこちらへ戻ってくること。良いですね?」


「あぁ、勿論だ」


「にしても、人手不足甚だしいですね。もう少し人員が居れば良いのですが……」


「その点に関しては問題ない。昨日、オレの正体を話しておいたみんなには、既に状況の説明はしてある」


「え……?」


 テーブルの向こうに座った玲奈が、驚きの目を向けてくる。


 その時、キャンピングカーの扉がコンコンと叩かれた。


 そして、扉の向こう側から、彰吾のくぐもった声が聴こえてくる。


「は、早く開けてくれ、楓馬……!! これ、かなり重い……!!」


「情けない男ですね。それくらいきびきびと持って行って欲しいものです」


「やー、花子、それはかなり鬼畜じゃない? 流石に彰吾くんでもこの機材運ぶの無理があるでしょ……」


 オレはその騒がしい声に笑みを浮かべた後、扉を開いた。


 すると、キャンピングカーの中に、彰吾、花子、陽菜の三人が入って来る。


 彰吾は手に持っていたダンボールをテーブルの上に置くと、ゼェゼェと荒く息を吐き出した。


「し、死ぬ、なんつー重いもんをオレに運ばせてんだ、このオカッパ座敷童……!!」


「オカッパ座敷童ではありません。真祖の吸血鬼、フランチェスカさんです」


 花子ことフランチェスカさんはオレへと視線を向けると、不敵な笑みを浮かべた。


「青き瞳の者。手配通りに一式の器具は揃えましたよ。モニターは、このテーブル前に配置すればよろしいですか?」


「あぁ。あと、カメラは大丈夫か?」


「ええ。言われた通りに、極小のものを用意しました。かなり高価なものですので……無くしたら、お前のバハムートが無くなると思ってください」


「そりゃあ……十分に注意しなくちゃいけないな」


「カメラ……? 兄さん、いったい、何をするつもりなんですか?」


 驚き戸惑う玲奈。オレはそんな彼女に、いたずらっぽく笑みを向けた。


「極小のカメラを服に忍ばせて、有栖陣営を偵察してくる。このモニターは、オレが持つカメラの映像と直結させようと思ってな。指示役からの命令も、ワイヤレスイヤホンで聴けるようにする。まっ、有栖の弱みを見つけるのなら、これくらいやらなきゃいけないだろ」


「指示役は、アタシね! ふっふっふっ、参謀、春日陽菜……!! かっこよくね?」


「馬鹿ですか。お前が参謀をやったら全てが終わりますよ、ビッチ。ここは玲奈さんか香恋さんが適任でしょう。まぁ、香恋さんは入院されたようなので、必然的に玲奈さんになりそうですが」


「えー? じゃあ、アタシはー?」


「陽菜さんと彰吾は、オレと一緒に東京に来て欲しいです。旅費と食費、ホテル代は出しますので、オレの周囲を見張っていてください」


「マジか! 陽菜ちゃん、東京デビューっすか!」


「え? マジかよ、俺も東京行かなきゃいけないのかよ……」


「みなさーん、買い出ししてきましたよー」


「おお、委員長! 朝ごはんですかな!? 陽菜、嬉しいよー!!」


「わわっ、ちょ、陽菜さん、突然抱き着かないでください!!」


 ビニール袋を持ってキャンピングカーに入ってきた牧草さんに抱き着く陽菜。


 オレはそんな仲睦まじい二人を見つめた後、静かに息を吐いた。


「現状、人員は確保できている。だけど、最も足りないのは……武力、だな」


 白鷺の爺さんから言われていた、二人の護衛。


 その二人を武力の当てにしていたのだが……現状、オレの前に現れる気配がしない。


 このチーム、香恋陣営の中でも武力を持っているのは、オレだけだ。


 万が一、ルリカや玲奈が人質に取られた際、オレ一人では対処しきれないこともある。


 どうにかして、戦闘技術を持つ人材をこちら側に引き入れたいところだが……オレが知っている限り、戦闘できる人間は銀城先輩だけだ。


「……」


 スマホの電源を点け、レインアプリを開く。


 協力して欲しいと先日、メッセージを送ったのだが……一向に、銀城先輩から返信は来ない。


 その理由は分からない。いつもの彼女だったら、オレの返信にすぐ既読が付くものなのだが……。


「ん?」


 ひとつ、レインにメッセージが届いていた。


 それは、銀城先輩と同じように協力申請をしていた……茜からだった。


 茜からは、一言、こう書かれていた。


「楓! 早く東京に来なさい!」


 ……まったくあの馬鹿は。花ノ宮家の御家騒動に巻き込まれつつあることに、気が付いているのかね……。

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