98.サプライズ③
「サボテン、2つになったな」
悠木に貰ったサボテンが、窓際にふたつ。
ひとつは、今日貰ったやつ。
もうひとつは、一昨年貰ったやつ。
「1つじゃ、寂しそうだから。サボテンが」
そう言って悠木は笑った。
「だな。クマも2匹いることだし、サボテンだって2つある方がいいな」
サボテンの隣には、2年連続でクリスマスに悠木から貰った、ビンゴの景品だというクマのぬいぐるみが2つ。
「うん」
小さく頷いて、悠木は笑顔のままじっとサボテンを見る。
気のせいか、その悠木の笑顔はどこか寂しそうな笑顔に、俺には思えた。
「花、咲くかな」
「しじょー次第」
「俺、頑張って花咲かせるよ」
「まずは受験でサクラ咲かせる」
「・・・・はい」
ピシッとした口調で、悠木はさらに俺に課題を課したのだった。
・・・・寂しそうに見えたのは、気のせいだな、きっと。
「課題終わってなかったのに怒らなかったのは、俺の誕生日だったからか?」
帰り際。
玄関先で、靴を履きかけた悠木にそう訪ねてみる。
ずっと気になってたんだ。
スパルタ悠木先生が、課題も終わってない俺を怒らないだけじゃなく、サプライズで誕生日まで祝ってくれるなんて。
・・・・まぁ、誕生日は、毎年祝って貰ってたけど。
でも、誕生日だから大目に見てくれた、というのなら納得できる。
だが。
「ちがう」
意外な答えが帰って来た。
「え?」
「終わらない量だから」
「・・・・はっ?」
靴を履き終え、悠木がクルリと俺の方を向く。
「サプライズの、時間稼ぎ」
「・・・・はぁっ?!」
曰く。
大量の課題を出せば、バイト終わりの疲れた状態なら、必ず俺は寝てしまうだろうと踏んだらしい。
そして、俺が寝ている間に、準備してきたハンバーグを焼き、スープやサラダを作れば、起きた俺を驚かす事ができると、最初から計画していたとのこと。
あの、悠木が肩から下げていたでかいバッグに入っていたのは、参考書でも問題集でも無く、食材だった、という訳で。
・・・・おいおい、なんて恐ろしいこと考えてんだよ、コイツは・・・・やっぱ、オニだ。
コイツはオニに違いないっ!
お陰で俺が、目覚めた時にどれだけ焦ったかっ!
と、文句が口から出る寸前。
「しじょーは、真面目だから」
そう言って、邪気の欠片もないような笑顔を残し、悠木は帰って行った。
俺は。
悠木が残していったその笑顔に、完全にやられてしまったようだった。
・・・・ま。
オニでも、いっか。
悠木なら。
なんて、思ってしまうほどに。




