96.サプライズ①
日曜日。
俺は朝からバイトを入れていてた。
悠木は用を済ませてから、カテキョをしに家に来ると言う。
・・・・今回、なんか知らないけど、スパルタ悠木先生に出されたのはオニのような課題の量で。俺としては必死にやったんだけど、終わらなかったんだ、あと少しが。
でも、まぁ、バイト終わってからやれば間に合うだろう。
悠木が来るのは、夜だろうし。きっと今日も、仕事だろうから。
そんな計画を立てていたのだが。
実際には、想定外の展開となった。
バイト先の店近くの小学校が運動会だったということもあってか、目が回るほどに忙しかったのだ。
レジは、捌いても捌いても長蛇の列。
品出ししても、すぐに棚が空になる。
俺も、一緒にバイトに入っていた相方も、バイトが終わる頃にはすっかりヘトヘトになっていた。
「あ~・・・・疲れた」
「今日、忙しかったっすね」
相方が、グッタリした様子でへたり込む。
俺よりひとつ下のクセに、だらしねぇなぁ。
なんて軽口も言えないほど、俺もクタクタに疲れていた。
でも、バイト時間も、あとわずか。
「ほら、俺、レジの金数えるから。お客さんきたらレジ対応しろよ」
「へーい」
かったるそうに相方が立ち上がった時。
閉めている俺側のレジの前に、人が立った。
「すいません、お会計はあちらで・・・・」
言いかけた言葉が、思わず止まる。
そこにいたのは、ダサメガネ姿の悠木だった。
「おまっ、なんで」
「お迎え」
「は?」
「もう、終わる?」
「あ、あぁ・・・・」
疲れで回らない頭で答えながらも、俺の頭は疑問符だらけだ。
なんで、悠木がここに?
『お迎え』って、なんだよ?
今日、仕事じゃなかったのか?
「先輩、いいっすよ、あとオレやっとくんで。あがってください」
珍しく、相方が気を使ってそんなことを言う。
それに甘える形で、俺は迎えに来た悠木と一緒に店を出た。
「仕事、早く終わったのか?」
「・・・・まぁ」
やばいな、俺まだ課題終わってないのに。
・・・・悠木、怒るだろうな。
無表情で隣を歩く悠木に、俺は意を決して恐る恐る告げた。
「俺、まだちょっと終わってないとこあるんだけど・・・・」
「待つ」
えっ?!
表情も変えずに答える悠木に、驚いて悠木を見る。
悠木から出されていた課題が終わってない、と言ったのに。
あの、スパルタ悠木先生が、一ミリも怒らないなんてっ!
しかも。
待つ、なんてっ!
「なに?」
あまりに俺がじっと見すぎてしまったからか、悠木が小首を傾げて、怪訝そうな表情を浮かべる。
ただそれは、どう見たって、怒っている表情には見えない。
「いや・・・・帰ったらすぐやる」
「うん」
なんか、怖い。
スパルタ悠木先生がこんなに怒らないなんて、逆に怖いぞ・・・・
ふと気づくと、悠木はいつもよりも大きめなバッグを肩から下げている。
・・・・もしかして、あの中身全部、問題集とかじゃないだろうな・・・・
自分の想像が余りに恐ろしくて口に出すことができず。
俺はそっと、悠木のバッグから目をそらし、見なかったことにした。




