9.プレゼント
「そか。じゃ、消すぞ?」
「うん」
照れ隠しに、俺は灯された1本のろうそくに向かって、息を吹きかける。
たった、1本だ。
一息で、ろうそくの炎はあっけなく消えてしまい、部屋の中は真っ暗に。
「電気付けるぞ」
「うん」
立ち上がって電気を付けると。
ケーキの隣には、さっきまでは確実に無かったはずの、小さなサボテンが鎮座している。
「えっ・・・・」
「好きだって、言ってただろ」
確かに、俺はサボテンが好きだ。
心が和むような、丸い形にツンツン棘がある、あのよく見かけるやつ。
でも、そんなことまで悠木に話しただろうか?
・・・・悠木が言うなら、きっと話したんだろうな。
昼寝の時にでも。
あいつが寝ている隣で、独り言のように。
だって、そこに鎮座しているサボテンは、俺の好みドンピシャの、一番好きな形のサボテンだったから。
「ありがとな、悠木。すげー嬉しい」
「そうか」
口数が少ないのは相変わらずだけど、俺の反応に悠木も珍しく、めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしている。
それがまた、俺には何とも嬉しかった。
あんな、バッチリ決まった超絶イケメンじゃなくても、いつものボサボサ頭でダサメガネの悠木でも、こんな風に笑うといい顔になる。
気づくと俺は、口に出して言っていた。
「お前、いつもそういう顔してた方が、もっと友達ができると思うぞ」
「ん?」
「いっつも無表情じゃなくて、そういう柔らかい顔をしてた方がいい」
「・・・・何で?」
「何で、って・・・・」
悠木はキョトンとした顔で、ダサメガネ越しに俺を見ている。
こいつ、ほんとは日本語が通じないんじゃないだろうか。
たまに、本気で疑いたくなる時がある。
でも、おそらく悠木は、冗談でも何でもなく、本当に分からないから、聞いて来るんだろう。
頭いいくせに、時々子供みたいに無知な所を見せるこいつが、頭痛の種でもあり、でも何だか楽しみでもあり・・・・
「まぁ、いいや。お前がそれでいいなら、いいんだ」
「・・・・?」
小首を傾げる悠木を無視して、俺はさっさとケーキを切り分けた。
「じゃ、遠慮なく。いだきま~す!」
「うん」
久しぶりに頬張ったショートケーキは、めちゃくちゃ甘くて美味しくて。
きっと俺は今、子供みたいな笑顔をしているんだろうな。
そんな事を思った。




