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84.痴話喧嘩②

「あ・・・・」

「おう」


 帰りがけに藤沢のクラスへ向かった俺は、向かいから歩いてくる藤沢の姿を見つけて立ち止まった。

 その回りを見てみるが、夏川の姿は見当たらない。


「誰か探してるのか?」

「夏川、一緒じゃないのか?」

「ああ・・・・女子会だってさ」

「そっか」


 そのままなんとなく、藤沢と二人並んで帰り道を歩く。


「なぁ、藤沢。俺、ちょっと聞きたいことあるんだけど」

「奇遇だな。俺もお前に聞いてもらいたいことがあるんだ」


 以心伝心か?


 と、藤沢は笑う。


 なんだかさらっと照れる事言ってるけど。

 言う相手、間違ってないか?

 俺じゃ、無いよな?

 いや、嬉しいよ?

 俺も藤沢好きだし。

 でも。

 他にも言うべき奴がいるだろ?


「じゃ、俺んちでいいか?」

「あれ?今日瑠偉は?」

「今日は仕事」

「そっか」


 藤沢は今、ごく普通に悠木のことを口にした。

 と言うことは。

 もしかして、『避けられてる』なんて、悠木の思い過ごしじゃないか?


 なんて、俺は軽く考えていたのだが。

 事態は俺の想像以上に面倒なことになっていた。



「夏川は、本当に俺のことが好きなんだろうか」


 いつものクセでつい入れてしまった玄米茶を啜りながら、藤沢が突然そんなことを言い出した。


「えぇっ?!どうした、いきなり・・・・」

「あいつ、本当は本気で、ルイが好きなんじゃないかって・・・・」

「へっ?」

「ああ、モデルの方、な。あいつ、バレンタインからずっと、ルイの話ばっかりなんだ。分かってるぞ?ルイは瑠偉なんだってことくらい。わかってるけど、さ・・・・小さい男だって、自分でも思うけど。俺、最近じゃ瑠偉にも嫉妬しちゃってるんだよ。バカだろ。分かってるんだけど・・・・瑠偉は何にも悪くないのにさ。なぁ四条、俺、どうすりゃいいんだろう?」


 なんか。

 俺もだいぶ前に、同じように藤沢に助けを求めたっけ。


 懐かしく思いながらも、俺は、心の中で夏川に毒づいていた。


 だから、言っただろーが。

 藤沢の前でルイの話はするなって。

 まったくもう・・・・お陰で悠木がいい迷惑を被ってるんだぞ。藤沢まで、こんなに悩ませて。


 はぁ、と。


 藤沢は玄米茶を啜りながら、すっかり肩を落としている。


 ルイは悠木なのに。

 藤沢はルイに嫉妬して。

 だから、悠木にまで、嫉妬して。


 ・・・・どーすりゃいいんだ、これ?


「藤沢さぁ・・・・」


 夏川のこと、もう少し信じてやれば?


 そう言おうとした時。


 俺のスマホが鳴り響いた。

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