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81.バレンタイン①

 2月14日。


 別に、気にしてない。

 ガキじゃないんだから。

 チョコのひとつやふたつ、なんだってんだよ。


 ってのは、もちろん建前。


 今年こそ俺、一個も貰えないかも・・・・


 と。

 内心はどんよりドヨドヨだ。


 バレンタインなんて、この世から無くなっちまえ!


 そう思いながら、何食わぬ顔で校舎に入ったとたん。

 右肩が、軽く叩かれた。


「ん・・・・いてっ!」


 振り返った頬に、突き刺さる指。

 こんなことする奴なんて、あいつくらいしか・・・・


「夏川っ、お前いい加減に・・・・へっ?!」


 勢いよく左後ろに振り返った俺の目の前にあったのは、ラッピングが施されたチョコレート。


「はい。これ、四条の」

「えっ?」

「ま、義理だけどね」


 そう言って、夏川は照れくさそうに笑う。


 お前、いいのか?こんなことして。

 おみくじにも書いてあっただろ、【疑わしき行動は、厳に慎むべし】って!


 俺の方がなんだか罪悪感を感じて、藤沢の姿が無いか、辺りをキョロキョロと見渡してしまう。

 見たところ、藤沢の姿は無いようで、俺は内心ホッとした。


「さて、四条は今年、何個貰えるかな~?」

「・・・・これだけ、だろな」

「ふうん?可哀想に」

「笑いながら言うな」

「えへへ」

「つーか、本命にはもう渡したのかよ?」

「やだ~、まだに決まってるじゃん!」


 直後。

 夏川は、乙女オーラ全開な笑顔を浮かべる。


 そうか。

 お前、藤沢の事がそんなに好きか。

 なら、大丈夫だな、俺が余計な心配なんかしなくても。


 そう思ったとたん。


「今日、学校終わったら、ソッコーでイベント行って渡してくるんだっ!」

「・・・・はぁっ?」

「ルイに、ね」


 そっちっ?!


「だって~、ほら、去年、ホワイトデーにメッセージカード、貰っちゃったじゃん?ネット見てみたけど、あんなメッセージカード貰ったなんて、誰も言ってないのよ。もしかしたら、貰ったの、あたしだけかもしれないんだよ!これはもう、今年も絶対、渡すでしょ!あ~・・・・愛しのルイ、待っててね、今日も絶対会いに行くから!」


 浮かれ気分で呟く夏川の姿を横目に、俺はまた慌てて、周りに藤沢の姿が無い事を確認してしまう。


「おい夏川。お前、間違ってもそんなこと、藤沢の前で言うなよ?」

「え?なんで?」


 夏川は、キョトンとした顔で俺を見る。

 本当に、何の事やら分からないらしい。


 ウソだろ?!

 なんで俺の周り、こんな鈍感だらけなんだよっ!


「あのなぁ、藤沢はお前が思ってるより・・・・」

「俺が、どうかしたか?」


 げっ。


 振り向けば。

 いつの間にか、背後に藤沢が立っていた。


「おはよー、藤沢」

「ああ、おはよ」


 夏川がすぐに藤沢に駆け寄り、鞄の中からラッピングが施されたチョコレートを藤沢に渡す。


「はい、これ。藤沢の」

「あ・・・・ありがと」


 フニャリとデレる藤沢の顔に背を向けると、俺はそっとその場を離れ、自分のクラスへと向かった。


 夏川、頼むぞ。

 藤沢の前で、ルイ愛なんて爆発させてくれるなよ。

 いくら藤沢がルイの正体を分かっていると言っても、あいつ、きっといい気持しないだろうからな・・・・



 クラスに向かう途中で、スマホがメッセージを受信した。


【今日、仕事】


 悠木からだった。

 今日は1日仕事らしい。ということは、学校は休みか。


【夜、ちょっとだけ、いいか?】


 多分また、食いきれないほどのチョコを抱えて来るんだろう。

 去年みたいに。


【うん】


 短く返信をすると、すぐに既読が付く。


 あいつ、どんだけチョコ貰うんだろうな。


 艶やかな笑顔を振り撒きながら、女子達に囲まれて黄色い歓声に包まれているルイの姿が、容易に想像できる。

 それでも、なぜか。

 俺には『羨ましい』と思うことができなかった。

 去年の今頃なら、確かに『羨ましい』と思っていたのに。

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