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80.おみくじ

 賽銭箱までの長蛇の列の順番待ちを、タコ焼きやら焼き鳥やらを食いながら耐えた後、俺達はやっと『初詣』をすることができた。


 いつもの年なら、100円玉1枚。

 でも。

 今年はなんとなく、100円玉3枚。

 賽銭箱に投げ込んで、神様への願い事をする。


 何を願うか。

 そんなことは、決まっている。


 今年もみんなが元気で楽しくいられますように。


 たった300円程度で、とんだ願いだとも思うけれども。

 俺の願いは、いつも同じ。

 ただ、【みんな】の人数が、どんどん増えていくだけだ-残念ながら、偶に減ってしまうこともあるけれど。


「ねー、おみくじ、引こうよ!」


 夏川の言葉に、俺達はみんなでおみくじを引くことにした。

 結果。


 藤沢 : 小吉

 夏川 : 凶

 悠木 : 大吉

 俺 : 中吉


「げっ・・・・凶だ・・・・」

「え?!」


 がっくりと項垂れる夏川に、悠木が珍しく食いつく。


「見たい」

「あ・・・・うん」


 夏川の引いたおみくじをシゲシゲと眺め、悠木は言った。


「本当に、あるんだ」

「なにが?」

「凶。初めて見た」

「うそっ!」

「大吉しか、引いたことない」


 涼しい顔をしている悠木に、藤沢、夏川、俺の視線が一斉に注がれる。


 いるんだな、本当に。

 すげー強運の持ち主って。


「・・・・なに?」

「「「いや」」」


 視線に気づいた悠木が小首を傾げたが、俺達は黙って各々のおみくじへと視線を落とした。


 その後、それぞれのおみくじを見せ合った所、結果はこうだった。


【学業】

 藤沢 : 諦めるのはまだ早い。勝負はこれから。

 夏川 : 今は暗闇。されど、信じた道に光あり。

 悠木 : 順風満帆。心配無用。

 俺 : 努力は必ず報われる。ただし、継続を怠るなかれ。



【恋愛】

 藤沢 : 疑わざるべし。なお、誤解の相あり。注意すべし。

 夏川 : 疑わしき行動は、厳に慎むべし。

 悠木 : 己の心を見つめるべし。信じることが肝要。

 俺 : 忍耐の時。己の想いが試される。



「この神社のおみくじって、結構当たってるって評判なんだよな」


 藤沢が、ポツリとそんな事を言う。


「俺、何を誤解されるんだろう?」


 俺を含めた3人の視線が、一斉に藤沢へと注がれる。


 ウソだろ、藤沢。

 もう既に誤解され始めてることに、早く気付け!


「疑わしき行動なんて、あたし、しないけどなぁ・・・・ねぇ、四条?」

「なんで俺に聞くんだよ?」

「なんとなく」


 目の前で、藤沢がジトッとした目を、俺に向けて来る。


 頼むよ、夏川。

 それだよ、それ!

 言われたそばから疑わしき行動をするんじゃないっ!

 それから、藤沢っ!

 疑わざるべし、だろっ!

 夏川を疑うんじゃないっ!


「信じる・・・・」


 そう呟いて、悠木がダサメガネ越しに、じっと俺を見る。

 とたん。

 一瞬頭を掠めてしまった昨晩のヤマシイ衝動が思い出され、俺はつい、視線を逸らせてしまった。


「しじょー?」

「なななんだよ?」

「なんか、したか?」

「してねえよっ!」


 気付けば、俺以外の3人の疑わし気な目が、俺を見ている。


「なんもしてねぇってばっ!」


 直後。

 クスッと笑い、悠木が言った。


「信じる」


 あ~・・・・良かった。

 あの時の俺、よく頑張った、よく耐えた!偉いぞ、俺っ!


「さて、帰るか」


【凶】の夏川のおみくじだけ所定の場所に結び付け、俺達は参道を歩き出す。

 スッと隣に並んだ藤沢が、慰める様に俺の肩に手を置いて、小さな声で言った。


「ドンマイ、四条」

「・・・・ああ」


 忍耐、な。

 言われなくたって、分かってるさ、そんなこと。

 ほんと、嫌になるほど当たってるな、あのおみくじ。


 つーか俺達、高校生だけど。

 誰一人、【学業】について話題にしないって、どういうことだ?

 ま。

 高校生=青春真っただ中、だし。

 仕方ないか。

 そう悪い事が書いてあった訳でも、無いしな。

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