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76.クリスマス・イブ③

「あと、これ」


 悠木が思い出したように、小振りの袋を俺に手渡す。


 はいはい、これもデジャヴだろ。


「事務所からのプレゼントか?」


 当然の流れので俺は聞いたのだが。

 悠木は小さく、頭を振った。


 え?

 ウソ?!

 だってこの展開なら、これって、事務所からのプレゼントじゃ・・・・


「オレから・・・・」


 思わぬ展開に頭がついて行かず、俺は暫く口を開けたまま悠木を見ていた。


 ウソだろ?

 悠木が、俺に?

 クリスマスプレゼント?!


「しじょー?」


 悠木の声にハッと我に返る。


 アブナイアブナイ、違う世界に飛んでいた。

 仕方ないだろ。

 ビックリするくらい諸設定は色々おかしいけど、好きな奴からクリスマスにプレゼントを貰えるなんて、彼女無しの高校生男子にとっては、普通に夢だぞ?

 そりゃ、まぁな。

 お互いの誕生日は祝っているけど。プレゼントも貰ったりあげたりしてるけど。

 クリスマスって、なんかこう・・・・誕生日とは違う訳で。

 俺は、悠木からクリスマスプレゼントを貰えるなんて、本当に思ってもいなかったんだ。


「悪い悪い。実は俺もあるんだ」


 机の上に置いておいた袋を取り、悠木に手渡す。


「え」

「せーの、で開けるか」

「うん」


 せーの、で。

 お互いに、手にした袋を開けて、中身を取り出す。


 悠木から俺へのプレゼントは、暖かそうな深緑色の毛糸の手袋。

 俺から悠木へのプレゼントは、暖かそうな深紅の毛糸のマフラー。


 お互いに顔を見合わせて、どちらからともなく微笑み合う。


「ありがとな」

「ありがと」


 悠木はさっそくマフラーを首に巻く。

 やっぱり赤にしてよかった。

 悠木によく似合っている。

 実は、色違いで俺も自分用に緑色のマフラーを買った、ってことは、まだ内緒にしておこう。

 ちょうど、悠木からもらった手袋と同じ色だ。なんていう偶然だろう。


 悠木はマフラーを巻いたまま、目を細めて俺を見た。

 ものすごく、嬉しそうな顔をしている。

 その悠木の笑顔に、どうにも腹の底のソワソワが落ち着かず、俺は


「お茶、もう無いだろ?入れて来るな」


 と、その場を逃げ出した。


 色々とおかしい諸設定のせいで、俺は悠木に何もできない。

 嬉しくて嬉しく、抱きしめる事さえも。


「悠木、腹は減ってない・・・・な」


 頭を冷やしてから部屋に戻ると。

 悠木は、昼間干した枕を頭に、眠っていた。

 赤いマフラーを、首に巻いたまま。

 嬉しそうに微笑んで。

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