75.クリスマス・イブ②
夜の9時過ぎ。
悠木が俺の家に来た。
モデル姿のままのカッコで。手に大きな袋を持って。
・・・・って、どこまでデジャヴ続ける気だよ!
「事務所のパーティがなかなか終わらなかったんだな?」
「うん」
よし。
デジャヴ終わり。先回りしてやったぞ。
なんて、余裕ぶっこいてる場合では、なかった、実は。
久し振りに見る悠木のグレーの瞳に、俺の心臓は主の意志に構う事なく、暴れまくっていたのだから。
ズルいよな。
悠木はこんなに涼しい顔して俺の前に立てているのに。
俺、いつからこんなんなっちまったんだろ。
「ちょっと、挨拶」
「ああ」
悠木がじいちゃんとばあちゃんの仏壇に手を合わせている間に、玄米茶を入れ、部屋に運ぶ。
悠木の枕は今日一日お日様に当てておいたから、フカフカになっているはずだ。
「これ」
和室から俺の部屋に来ると、悠木は頭をクシャクシャと崩しながら、手にしていた大きな袋を俺に押し付けてきた。
「なんだよ」
「ビンゴの景品」
「また?」
「うん」
ボサボサ頭のいつもの姿に戻り、悠木はいつもの場所に座って、おいしそうに玄米茶を啜っている。
つーか、またデジャヴ?!
「開けるぞ?」
「うん」
袋を開けると、中から出てきたのは、可愛らしいクマのヌイグルミ。
ウソだろ?
どんだけデジャヴ続ける気だよ!
「みんなが、彼女にでもあげろ、って」
だからさ、俺、お前の彼女じゃねぇって。
言おうとして、ふと思った。
【みんな】が【彼女】にあげろって?
ってことは?
「お前、彼女いるのか?」
俺の言葉に、悠木は玄米茶の入った湯呑を手にしたまま、固まった。
あー、そっか。
悠木は、女だ。
いや、でも、俺の前では、男だよな?
ん?
でも俺が聞きたいのは、そうじゃなくて・・・・
あーもうっ、ややこしいっ!
「あー、お前じゃなくて、いや、お前だけど・・・・その、モデルのルイ的に、だぞ?」
「・・・・あぁ」
固まっていた悠木の顔が、やっと和らぐ。
ほんのりと頬を染め、悠木は小さく頷いた。
だよな。
じゃなきゃ、言わないよなぁ?
【彼女にでもあげろ】なんて。
彼女がいない奴からしてみれば、普通にイヤミになるだろ?
きっと、ルイに彼女がいるってことは、モデルの仲間内では公然の事なんだろう。
でも、ルイの相手って、一体・・・・?
「それって、誰?モデル仲間?それとも、芸能人か?!」
俺の言葉が聞こえていないはずはないのに。
悠木は黙って玄米茶を啜っていた。
無視かよ、おい。




