表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/131

72.家庭教師:悠木先生

 ・・・・こいつの頭、いったいどうなってんだ?!

 寝てるとこ起こして計算式見せたって、寝ぼけ眼で答えるし。

 おまけに、全問正解。

 俺、とんでもない奴、家庭教師にしてしまったのかも・・・・


「ん~・・・・これってさっきと似てるけど、でも違うよな。この公式じゃ解けないし・・・・なぁ、どの公式使うんだ?・・・・って、おいっ!」


 俺の家庭教師:悠木先生は。

 いつだって、最初だけは隣に座って大人しくしているけど。

 気付くといつの間にか枕を頭に、眠っている。

 悠木専用の、枕で。

 まぁ。いいんだけど。

 悠木がうちでいつでも寝られるようにと、プレゼントしたやつだから。

 いいんだけど、な?

 今お前、俺の家庭教師だから、な?


「おいっ」


 ペシッと、軽く悠木の頭を叩く。


「いて」

「これ、どの公式使うんだ?」

「あぁ・・・・」


 億劫そうに目を開け、受け取った参考書をペラペラとめくり、悠木は事もなげに答える。


「これ」

「あぁ・・・・」

「昨日も言った」

「だっけか?」

「憶えろ」

「はい」


 不機嫌そうに教科書を俺に突き返すと、悠木は再び目を閉じる。


 どこの世界に、寝るついでのように教える家庭教師がいるんだよ。

 まぁ、ここに確実に1人はいるけど。


 ボサボサ頭の悠木の寝顔を、俺はなんとはなしに眺めた。

 良く見れば。

 シュッとした輪郭だって、長い睫毛だって、通った鼻筋だって、形の良い唇だって、ルイそのものだ。

 なのに、なんで誰も気づかないんだろう?

 俺だって気付かなかったんだから、人のことは言えないけど。

 やっぱり、あれだからか?

 あの、特徴的なグレーの瞳が、隠されているからか?

 それとも、いつでもモッサリしたダサい服を着ているからか?

 でも、たったそれだけのことで、こんなにも分からないものだろうか。


「しじょー」


 目を閉じたまま、突然悠木が言った。


「オレの顔に答えは書いてないぞ」

「えっ・・・・あ、あぁ」


 こいつ、俺がずっと見てたの、気付いてたのかっ?!


 顔が熱を持ち始めるのを感じながら、俺は慌てて参考書に目を戻した。

 だが、字面を追えども、中身が全く、頭に入って来ない。


 ・・・・悠木を家庭教師にしたの、間違いだったかな・・・・


「35ページまでやっておけ。終わったら、次英語。28ページから」

「・・・・はい」


 それからいくらも経たないうちに、小さな寝息が聞こえてきた。

 どうやら本格的に、悠木が爆睡モードに入ったようだ。


「顔に答えが書いてありゃ、いいんだけど、な」


 数学でもない。

 英語でもない。

 もちろん。

 政経でも物理でも。


 俺が欲しい答えは、俺自身にもわからない。

 そんな答えを求められたって、お前だって困るよなぁ?悠木。


 よしっ!

 と気合を入れ、気持ちも新たに参考書と向き合うこと2時間ほど。


 グゥ・・・・


 音の発生源を見れば、目を覚ました悠木が、腹に手を当てて俺を見ていた。


「メシ、食うか?」


 俺を見たまま、悠木が小さく頷く。


「じゃ、作って来るから、少し待ってろ」

「うん」


 大きく伸びをして固まった体をほぐすと、俺は部屋を出てキッチンへ向かった。

 多分、俺がいない間に、悠木先生が俺の解いた問題をチェックしてくれているだろう。

 悠木先生は、間違いだらけだと、すげー機嫌が悪くなる。はっきり言って、滅茶苦茶怖い。

 でも、今日はかなり頑張ったから、多分悠木先生のご機嫌も、いいいんじゃないかと思う。

 そんなご機嫌な悠木先生に、何を食わせてやるべきか。


 冷蔵庫の中にあるものを確認しながら、俺は知らぬ間に鼻歌など歌っていた。

 悠木先生の、満足そうな笑顔を思い浮かべながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ