64.寝ともだち 再開
「おい、四条」
「ん~?」
二学期が始まってすぐの、昼休み。
早々に飯を食い終わり、机に頬杖をついてボーッと窓の外を眺めていた俺に、クラスメイトが声を掛けてきた。
「なんだ?」
「悠木が来てるぞ」
「えっ?」
まさか~。
そう思いながら、ぼんやり教室のドアを見た俺の目に飛び込んできたのは、所在なさげに突っ立っている、悠木の姿。
慌ててドアに駆け寄ると、悠木は硬い表情を少しだけ和らげた。
「どうした?なんか、あったのか?」
悠木は夏休み最終日に帰国し、直後にメッセージをくれていた。
ただ一言、【帰った】と。
【おかえり】の俺のメッセージは、既読にはなったものの、その後返信もなく。
始業式の日も、次の日も、俺は悠木の顔を見てはいなかった。
そのうちまた家に来るだろうとは思っていたが、まさか、昼休みに教室に来るとは。
悠木は、俺が側にいると眠れない、と言っていた。
だから、以前のような、昼寝の誘いではないだろう。
それなのに、昼休みに俺のところに来るなんて、何かあったとしか思えない。
だが。
悠木は怪訝そうな顔で小首を傾げただけで、そのままフィッと視線を逸らし、俺に背を向けて歩き出す。
「・・・・悠木?」
悠木が向かっているのは、図書室のある方向。
訳が分からないながらも、俺は慌てて悠木の後を追った。
図書室の、一番奥。
俺達の昼寝の、定番の席。
迷うことなく悠木はその席に向かい、途中で適当に本を2冊手に取って、いつもの席に座った。
そして、後から恐る恐るついて行った俺に、いつものように隣の席に座るよう、ダサメガネ越しに目で促す。
・・・・なんだ、一体?
何考えてんだ、悠木?
俺が悠木の隣の席に座ったとたん。
悠木はダサメガネを外して、机に突っ伏した。
俺の方に、顔を向けて。
嘘だろ?
だって、お前・・・・
「悠木?」
「うるさい」
「だってお前、俺がいると」
「眠い」
目を閉じたまま、悠木は短い言葉で俺の言葉を遮る。
・・・・相当、不機嫌だと思われる声音で。
なんだよ、一体。
本当に、全く訳が分からない。
でも。
訳が分からないながらも、俺は本当は、嬉しかった。
また悠木が、俺を昼寝に誘ってくれた事が。
俺の前で、ダサメガネを外してくれた事が。
そして。
いくらも経たないうちに、悠木は規則正しい寝息を立てだす。
悠木が、俺の隣で、眠っている。
その事実に、俺は。
飛び上がりたいくらい嬉しい気持ちを必死で抑え、目の前にある、読んだところで全く内容の分からない本のページをめくり続けたのだった。




