表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/131

62.勉強会

「なぁ。なんで夏川呼ばなかったんだ?」


 分かりやすいくらいに残念そうな顔をして、藤沢が言う。

 1学期の期末テスト対策の、勉強会 at 俺の家。

 今回の先生ももちろん、スパルタ悠木先生だ。


「あぁ・・・・うん。まぁ、色々、な。」


 夏川とは、あの告白の日以来、まともに顔を合わせていなかった。

 廊下などですれ違いそうになると、お互いに進行方向を変え、すれ違う事さえ避けている。

 俺は俺で、これからどうやって夏川と接すればいいか分からなかったし、多分それは夏川も同じなんだろう。

 そんな状態で、勉強会に誘える訳なんて、無いじゃないか。


 なんて。


 藤沢に説明できる訳もなく。


「次の勉強会にはちゃんと誘えよ」

「・・・・あぁ」


 適当に誤魔化すしかなかった。


 一方、悠木は失踪事件以来、昼寝にはやはり誘いに来ないものの、俺の家には来るようになった。

 最初俺は約束通り、悠木が家にいる間、なるべく家を空けるようにしていた。

 そして、悠木が起きたら連絡を貰い、その後家に帰るようにしていたのだけど。

 正直、面倒だった。

 だって、悠木には俺が帰るまで家に居て貰わなくちゃいけないし、俺は何かの途中でも、すぐに帰らなくちゃいけないし。

 だから、悠木には俺の家のスペアキーを渡すことにしたんだ。

 寝て起きて、帰りたくなったら好きな時に帰れるように。

 来たい時には一応事前に連絡は貰うけど、でも、俺がいなくたって、いつでも寝に来られるように。


 スペアキーを渡したとき。

 悠木は最初、ダサメガネ越しでも分かるくらいに、ビックリ目をして俺を見た。

 そう。

 気付けば悠木はまた、俺の前でダサメガネを外さなくなっていた。

 ホッとする部分もありつつ・・・・どこか、拒絶されたような気にもなったけど。

 仕方無い事なのかもしれない。

 きっとそれは、悠木が俺の前で眠れなくなったのと、同じ理由なんだろう。

 もしかしたら、無意識なのかもしれない。


 で、スペアキーの話に戻るけど。

 まぁ、そうなるよな。驚くのも、無理はない。

 鍵を預けるなんて、これじゃまるで、恋人同志みたいだし。

 でも、俺の説明に納得して、悠木はスペアキーを受け取ってくれた。

 すごく安心したのと同時に、心の奥の方では、ものすごく喜んでいる自分が、確実にいた。

『みたい』でも、構わなかったんだ。

 悠木が俺を信じてくれた事が、俺の提案を受け入れてくれた事が、俺には嬉しかった。


「しじょー」

「ん?」

「そこ。全然違う」

「えっ、マジ?!」

「さっきも、言った」

「・・・・すいません」


 相変わらず、悠木先生は、学校の先生よりも遥かに厳しい。


「なぁ、瑠偉。これは・・・・」

「教科書。ここ、ちゃんと読め」

「・・・・はい」


「あーもうっ!わかんねーっ!」

「やる気無いなら、やめる」

「いやいや、違うって悠木!ちょっと叫びたくなっただけだっ。あるだろ?そんな時」

「ない」

「えっ」

「真面目にやれ」

「・・・・はい。すいません」


 期末テストが終われば、夏休みはもう、すぐそこ。


 ・・・・今年の夏休みは、いったいどうなるんだろうな・・・・

 きっと、夏川からの誘いは、無いだろう。

 悠木は家に来るかもしれないけど、おそらく顔を合わせる事は、殆ど無いような気がする。

 とすると。

 バイト一色か?

 ああ、せっかくだから、バイクで遠出してみるのも、悪くないな。


 なんて、ほんの少し、夏休みへと思いを馳せたとたん。


「しじょー」


 いつになく低い、スパルタ悠木先生の声。


「ん?」

「やめて、いいんだな」


 ダサメガネの奥で、グレーの瞳が暗く燃えている。

 ・・・・相当に機嫌が悪い時の、悠木の瞳だ。


「すいませんっ、ごめんなさいっ、真面目にやりますっ!」


 俺は慌てて、教科書とノートに向き合ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ