54.悠木の失踪①
あいつ、ちゃんと寝てるのかな。
最近の俺の専らの心配事は、悠木の睡眠について。
昼休み、全然誘いに来ないから、もしかしたら独りで図書室行ってるのかと思いきや、居ないし。
他の昼寝ポイント回ってみても、どこにもいないし。
俺んちにも、全然来てないし。
あいつ、事務所の寮じゃよく寝られないって言ってたし。
藤沢曰く、『あいつが熟睡できるのは、本当に安心していられる場所だけ』らしいし。
・・・・ってことは。
俺んち以外に【安心していられる場所】を見つけた、ってことなのか?
それならそれで、悠木にとってはきっと、いいことのはずなのに。
俺の胸は、耐えがたいほどにズキリと痛んだ。
もう、無視なんてできるレベルではないほどに。
「藤沢、今日俺んち来ないか?」
どうしても一人でいるのが辛すぎて、帰りのHRが終わるとすぐ、俺は藤沢のクラスへ向かった。
「なんだ、どうした?失恋でもしたか?」
帰り支度をしていた藤沢が、軽い口調でそう言って笑った。
多分、冗談のつもりだったんだろう。
でも、絶句する俺の姿を見て、顔色を変えた。
「四条、お前まさか・・・・」
「帰る」
なんだか、俺は藤沢の前だと、弱い自分が出てしまうみたいだ。
もう、一度は醜態をさらしてしまっているという、安心感からかもしれないけど。
でも、ここは学校で、周りには他の奴らもまだたくさんいて。
・・・・もしかしたら、悠木もいるかもしれなくて。
だから、慌ててその場を離れようとした俺の腕が、藤沢の手に捕まった。
「付き合うぞ」
「いいよ。お前、ラクロスの練習あるんだろ?」
「ラクロス?・・・・お前いい加減憶えろ。俺はラグビー部だ」
「あ、そうだっけ」
「部活はあるけど、今日はお前に付き合う。いいな?」
「・・・・うん」
いい奴だな、藤沢って。
全然部活、憶えられないけど。
そうして俺は、藤沢と並んで歩きながら、家への道を歩いていた。
俺が話し出すのを待っているのか。
それとも、家に着いてから話を聞こうとしてくれているのか。
藤沢は、一言も喋らず。
俺も、一言も喋らなかった。
そんな時だった。
藤沢のスマホが、鳴り始めたのは。




