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53.悠木の気持ち

 あれ?今日あいつ、休みだっけ?


 昼休み。

 いつものようにさっさと弁当を食い終わって悠木を待っていたが、時間になっても悠木は来なかった。

 スマホを確認してみたが、特に、休みとか早退とかの連絡は無い。

 まぁ。

 約束している訳ではないし、来ない日も、偶にはある。

 それでも最近は、仕事で休む日や早退する日以外は毎日のように誘いに来ていたためか、なんだか肩透かしを食らった気分だった。


 なんか・・・・今日は寝られそうかも?


 昨日の晩飯の残りを詰め込んだ弁当は、いつもよりは結構量が多めで。

 腹が一杯になっていた俺は、久々に気持ちの良い睡魔がジワジワと襲ってくる感覚を覚え、1人で図書室へと向かった。



『これ』

『えっ?ああ・・・・カムフラージュで本、置いておくのね』


 いつもの席から聞こえてきた声に、俺は書架の陰で足を止めた。

 先客がいた。

 悠木と・・・・夏川だ。


 ・・・・なんであいつ、夏川と・・・・?


 胸にチクリとした痛みを感じた。

 知ってる。

 これは、紛れもなく、嫉妬だ。



『で、さぁ。ちょっと聞きたいんだけど・・・・ってっ!もう寝てるのっ?!早っ!』


 夏川の驚いたような声が、図書室中に響き渡る。


 アホッ!

 そんな大声出したら、出禁になるだろっ!

 場所を考えろっ、場所をっ!!


 ハラハラしながらも、俺は何故かその場から動くことができずにいた。

 先ほど俺を襲ってきていた気持ちのよい睡魔など、もう、とっくの昔にどこかに消えてなくなっている。


『悠木っ、ねぇ、悠木ってば!』

『・・・・なに』


 明らかに不機嫌そうな、悠木の声。

 普段からボソボソ喋るから、他の人にはあまり分からないかもしれないけど、これは相当機嫌悪いぞ。

 何してんだよ、夏川。

 悠木が眠い時は、ちゃんと眠らせてやってくれよ!


 だが、俺の願いも空しく、夏川は悠木に話しかけることをやめようとはしない。


『悠木は、さ。四条のこと、どう思ってるの?』


 夏川の言葉が耳に届いたとたん。

 俺は息が止まりそうになった。

 たぶん、無意識に、止めてしまっていた。

 悠木の答えが、気になって。

 一言も聞き漏らすまいと。

 俺の場所から、悠木の顔を見る事はできない。

 今、悠木はどんな顔をしているのだろうか。

 そして、どんな答えを口にするのだろうか。


 おそらく、夏川が聞いてから悠木が答えるまでの時間なんて、ほんの数秒だったに違いない。

 だけど、俺にはえらく長い時間に思えた。

 そして、聞こえてきた悠木の言葉は。


『眠い』


 えっ、ちょっ、悠木っ?!答えになってないけどっ!

 とかなんとか。

 呆れたような夏川の声が続いたが、もう俺の耳には入って来なかった。

 詰めていた息を思い切り吐き出し、その場にへたり込む。

 例えようもない、倦怠感。

 痛みと、安堵。


 しばらくその場にへたり込んでいたが、ようやくの思いで立ち上がり、そのまま教室へと戻る。


 多分、良かったんだ。

 悠木の答え、聞かなくて。


 そう、自分に言い聞かせて。


 だがその後、悠木の昼寝の誘いはパタリと無くなってしまった。

 それどころか。

 悠木の俺の家への訪問も、パタリと無くなってしまったのだった。

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