52.乱入
春の間は、天気がいい日はポカポカと日差しが当たる気持ちのよい穴場で、悠木と一緒に昼寝をしていたのだが(とは言え、寝ているのは主に悠木だけだ)、最近日差しも強くなってきたし、気温も上昇してきたしで、昼寝場所を図書室に戻した。
外の昼寝は、開放感があってなかなか気持ちいいんだけどな。
・・・・俺は滅多に寝ないけど。
まぁでも、図書室なら、開放感だけ我慢すれば、通年適温で、昼寝にはもってこいだ。
・・・・何度も言うが、俺は滅多に寝ないけど。
それでも以前は、俺もたまには寝ていたんだ。悠木の隣で。
最近眠れなくなったのは・・・・うん、分かってる。
これは、俺自身の問題だ。
・・・・多分、そう簡単には解けそうもない、問題。
「はぁ・・・・」
頬杖をついて、隣で机に突っ伏した状態で爆睡している悠木を眺める。
いつ見ても、起き抜けでそのまま来たのか?と思うくらいの、ボサボサな髪。
でも実は、悠木の髪は、柔らかいけどクセが強い。
ブラシをしたところで、そう簡単には真っ直ぐにはならないだろうし、このボサボサ、というか、フワフワしている髪もいいな、などと思ってしまう俺がいる。
触りたい。
すぐ手を伸ばせばそこにある、悠木の髪。
少しくらいなら触っても、起きないよな、悠木。
そう思って、恐る恐る手を伸ばしかけた時。
「四条、みっけ!」
声とともに、書架の間から夏川がひょっこり顔を出した。
「しっ!」
思わず口に人差し指を当て、夏川を睨みつけてしまう。
今、悠木は気持ちよく寝ているんだ。
騒いだら、起きちゃうじゃないか。
・・・・ま、この程度で起きるような悠木じゃないけど。
「あっ、ごめん・・・・」
夏川も、寝ている悠木に気付いたようで、慌てて声のボリュームを最大限に落として、俺達の向かいの席に座った。
「なんだよ、なんか用か?」
「ん~、そういう訳じゃないけど」
悠木を起こさないよう、ひそひそ話で夏川と俺は会話を続ける。
「四条さ、昼休みになるといっつもいなくなるじゃん?だから、どこ行ってるのかなって気になって。そうしたら、藤沢が教えてくれたんだよね。四条は悠木と昼寝に行ってるって」
あいつ・・・・
別に、藤沢に口止めした訳でもないし。
俺が悠木と昼休みに昼寝をしている事は、秘密にしている訳ではなかったけど。
なんだか、いい気持ちはしなかった。
悠木との時間を、邪魔されたような気がして。
「で、さ。私だって、眠たい時あるしさ。だから、偶にはお昼寝したいなぁって思って」
「そうか」
「そんな訳で。予鈴鳴ったら起こしてね。おやすみ!」
元気いっぱいに「おやすみ!」と言って、夏川も悠木に同じく、机に突っ伏した。
・・・・俺、なに?
目覚まし代わりか?!
昼休みが終わるまで、まだ時間はある。
だが、俺の元には、一向に睡魔は訪れそうもない。
「まぁ、いいけど」
1人呟き、頬杖をついたまま、俺は目の前にとりあえず置いておいた分厚い装丁の本をペラペラとめくってみた。
本当に日本語かと思うほど、中身が全く理解できない。
それは、胸の中でモヤモヤとしている、答えの出ない感情と同じくらいの難易度のように、俺には思えた。




