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51.2回目の誕生日会②

 夜8時半を少し過ぎた頃。

 悠木がうちに来た。

 いつもの悠木のカッコで。ケーキの箱が入った袋を手に持って。


 じいちゃんとばあちゃんの仏壇に手を合わせ、悠木は俺の部屋へと向かう。

 俺は用意しておいた冷たい玄米茶をグラスに注ぎ、ケーキ皿とフォークとナイフを一緒にトレイにのせて、悠木の後を追うように部屋へと向かった。

 やはり。

 部屋は電気が消されて薄暗く。

 テーブルの上の小さなホールケーキには、2本のろうそくが立てられ、あかりが灯されていた。


「2回目だからか?」

「うん」


 薄明りの中で、悠木が照れくさそうに笑う。


「じゃあ、来年は3本か?」

「うん」

「そっか」


 来年の約束ができる。

 その事がどんなに幸せな事か。

 俺はこの時、気付きもせずに口にしていた。

 悠木の笑顔に、ほんの少しの胸の痛みを感じながら。


「じゃ、消すぞ?」

「うん」


 2本のろうそくは、あっという間に消えてしまい、部屋の中は真っ暗に。

 立ち上がって電気を付けると、悠木は小さな包みを手に持っていた。


「しじょー、誕生日、おめでとう」


 そう言って、悠木は包みを俺に手渡す。


「気休め、だけど」

「え?」


 それは、掌に収まってしまうくらいの小さな包みで。

 気になって中を見て、俺は納得した。


 そこに入っていたのは、交通安全のお守り。


 俺がバイクの免許を取ったから、だろうと思う。

 悠木なりに、心配してくれていたのかもしれない。

 確かに、気休めかもしれないけど。

 その心遣いが、なんだかすごく、俺には嬉しかった。


「ありがとな、悠木」

「うん」


 俺の笑顔に安心したのか、悠木はダサメガネを外すと、冷たい玄米茶をゴクゴクと飲み始める。


「じゃ、食うか!」


 ダサメガネを外した悠木の姿にまだ馴れる事ができないでいる俺は、慌ててケーキを切り分け始めた。

 正直、昼間にスイーツを食い過ぎたお陰で、今は甘い物はノーサンキューな気分ではあったけど。

 悠木が俺のために買ってきてくれたこのケーキだけは、どうしても食いたい。

 悠木と、一緒に。


「・・・・うん」


 ワンテンポ遅れて返って来た返事に、悠木を見てみると。

 玄米茶の入ったグラスを持った体勢を維持したまま、悠木は目を閉じていた。


「悠木?おいっ、寝るなっ!」

「・・・・。・・・・起きてる」

「ウソつけっ」

「・・・・寝てない」

「寝るなら、ケーキ食ってからにしろっ!」

「・・・・。・・・・起きてる・・・・」


 そのまま倒れてしまいそうなほどに船をこぎ始めた悠木の手からそっとグラスを取り上げ、俺は静かにケーキを皿に取り分けた。

 仕方ない。

 こうなったら、悠木はこのまま確実に寝に入ってしまう。

 暫く寝かせてから、起こして一緒にケーキを食おう。

 門限に、間に合うように。


 間一髪のところで、倒れ込む悠木の頭の下に、悠木の枕を差し込んで。

 俺は暫くのあいだ、悠木の寝顔を眺めていたのだった。

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