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50.2回目の誕生日会①

「ゲッチュー!」


 後ろから走ってきた夏川が、俺の腕を捕まえる。

 いい加減気温も上がってきたこの暑い中、相変わらずの元気さだ。

 ・・・・背中に蹴りやら平手やら拳やらが入らなくなっただけ、随分マシだと思うべきだろう。


「なんだよ」

「ねぇ、ちょっと付き合ってよ」

「どこに?」

「イ・イ・ト・コ」


 当たってる・・・・夏川、当たってるって、お前の胸っ!

 彼氏でもない高校生男子の腕に、そんなに胸を押し付けるんじゃないっ!


 何かを企んでいそうな夏川を何とか引きはがすことに成功したものの、引きはがす際に目に飛び込んできた胸の谷間が、今度は脳裏に焼き付いて離れない。


 暑いからな。

 分かるけど、な。

 お前、少しは気を付けろよ。

 不用心が過ぎるだろ。


「見えてるぞ、谷間」

「えっ」


 瞬間的に顔を赤くし、夏川は慌てて胸元を手で押さえる。


「四条のエッチ」

「俺のせいかっ?!」

「うん。四条のせい」

「なんでだよっ!」

「なんでも!」


 再び俺の腕を取ると、夏川は俺を引きずるようにして歩き出した。



 到着したのは、駅前の、最近ちょっとした話題になっているスイーツの店。


「お前、毎日こんなんばっか食ってたら、太る・・・・ぐぁっ」

「何か言った?」

「・・・・いえ」


 鳩尾に不意打ちの拳をくらい、思わず前屈みになる俺を、夏川がギロリと睨む。

 そして。

 前屈みのままの俺を引きつれて店内に入ると。


「連れて来たよー、主役」


 そう言って、夏川は俺の背中を押し、席に座らせた。

 そこは、いわゆる【お誕生日席】。

 そのテーブル席には、マユちゃんにミナミちゃん。どちらも昨年のクリスマスに、夏川とクリパをしていた女子。

 そして、藤沢の姿があった。


「遅かったな、四条」


 学内でも5本の指に入るほどの可愛い女子2人に挟まれ、藤沢は居心地が悪かったのだろうか。それとも単に照れくさいだけなのだろうか。

 少しご機嫌斜めなようだ。

 それでも。


「はいはい。それじゃ、始めるよー、四条の誕生日会!」


 の、夏川の言葉に、ふっと頬を緩めた。


 えっ?

 誕生日?

 今日、俺の誕生日だったっけっ?!


 店員が慌ただしくスイーツを運んでくる間に、こっそりスマホで確認した日付は、間違いなく俺の誕生日。

 そして。

 スマホには、悠木からのメッセージが入っていた。


『夜、大丈夫か?』


 ・・・・お前も、俺の誕生日、憶えててくれたんだな、今年も。


 メッセージでは一言も誕生日には触れていないけれども、なんとなく、俺には分かった。

 今年も悠木は、俺の誕生日を祝おうとしてくれている。

 ・・・・おそらく、2本のろうそくで。


『うん』


 短く返信をし、俺はスマホをポケットにしまった。


「こんな可愛い女子たちに囲まれて誕生日のお祝いして貰えるなんて、幸せでしょ~?感謝しなさいよね、四条」

「ああ、うん。ありがとな、夏川」


 ここは素直に、礼を述べておくに限る。

 それに、本心から、嬉しい。

 女子云々はともかくとしても、誕生日を誰かに祝って貰えるなんて、それは素直に嬉しい事じゃないか。


 でも。と。

 ふと、俺は藤沢の事が気になった。

 なぜ藤沢まで、来てくれたのだろうか。

 確かに最近、俺と藤沢は仲がいい方だとは思う。

 でも、お互いの誕生日を祝い合うほどの仲では、ない。

 ・・・・だいたい、野郎同士で誕生日を祝い合うなんて、しないだろうからな、普通。


 そう思いながら状況を観察していると。

 なんだか、構図が見えてきた。


 マユちゃんとミナミちゃんはきっと、藤沢狙いだ。

 そして、藤沢は言わずもがな、夏川狙いだろう。

 ・・・・ん?

 俺ってもしかして、ダシに使われただけか?!


 そうは思いながらも。

 ワイワイと賑やかで楽しい時間をプレゼントしてくれた夏川に、俺はやはり感謝をしていたのだった。

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