46.ホワイトデー②
3月14日。
用事はさっさと済ませてしまうに限る。
バレンタインにチョコを貰うのは、ものすごく嬉しいけど。
ホワイトデーにお返しを渡すのは、ものすごく気恥ずかしいものだから。
俺はいつもより早めに学校に行くと、夏川を廊下に呼び出し、前の日に買ったクッキーを渡した。
「これ、四条が選んでくれたの?」
「・・・・まぁな」
「ふふっ、ありがとう」
そんなに大したものではないけど、俺が自分で選んだのは事実だ。
夏川が好きそうな、ドライフルーツが入った見た目の可愛いクッキーを、俺は小一時間ほどかけて選んだのだ。
・・・・たかだか菓子を買うのに、小一時間もかけたのなんて、初めてだ。
嬉しそうに、そして少し照れたように笑う夏川に、俺は忘れないうちにと、悠木から預かっていた白い封筒も手渡した。
「あと、これ」
「えっ・・・・なになに?もしかして、ラブレターっ?!」
「んな訳、ねぇだろ」
「なぁんだ、ちぇっ」
冗談とも本気ともつかない態度で舌打ちをし、夏川は受け取った封筒をその場で開ける。
と。
「なっ・・・・マジっ?!なにこれーっ!なんでっ、四条どうしたのこれっ?!」
「え?」
「どこで手に入れたのっ?!てか、これちゃんと、あたし宛になってるじゃんっ!『亜由実ちゃんへ』ってっ!!」
なにやら大興奮の夏川の姿に、俺は夏川の手元を覗き込んだ。
夏川が手にしていたもの。それは。
ルイから夏川への、チョコのお礼とサインが書かれた、ルイの写真だった。
『亜由実ちゃんへ
オレの為に、チョコ作ってくれたんだね。
嬉しいよ。
ラッピングも丁寧だったし、チョコもすごくおいしかった。
ありがとう。オレの可愛い亜由実ちゃん。
ルイ』
悠木・・・・あいつ。
憶えてたんだな、夏川がルイの大ファンだってこと。
つーか。
なんだよ、『オレの可愛い亜由実ちゃん。』って。
完全に、ルイになり切ってんじゃん。いや、悠木はルイだから、まんま本人なんだろうけれどもっ!
・・・・やっぱ、読むべきじゃなかったかも。
すげー、拒絶反応が・・・・
そりゃ、悠木も俺には見られたくないよなぁ、こんなの。
頑なに断ったのも、顔赤くしてたのも、今ならわかる。すげーわかる。
「ねー見て見て!ほらここ、『オレの可愛い亜由実ちゃん。』って!あーもうあたし、一生ルイについていくっ!」
げんなりする俺とは対照的に、夏川は完全に浮かれまくっている。
まぁ、そうなるよな。
大好きな奴から、こんなメッセージなんか、貰った日には。




