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44.バレンタイン④

「夏川からだ」

「えっ」

「お前、知らないのか。あいつ、ルイの大ファンなんだぞ」

「え・・・・」


ポカンと口を開け、悠木は俺の顔と夏川からのチョコを交互に見ている。


「実は、俺も夏川から貰った。まぁ、あいつの本命は、ルイみたいだけどな」


口を開けたままの悠木の前に夏川からのチョコと手紙を置き、俺も夏川から貰ったチョコを鞄から取り出す。

一瞬、ダサメガネの奥の瞳が見開かれたような気がしたのは、俺の気のせいだろうか。


「せっかくだから、一緒に食おうぜ」

「・・・・うん」


悠木のチョコを見ると、確かに俺が貰ったチョコよりも格段に綺麗な仕上がりになっていることが分かった。

かと言って、俺にくれたチョコが不格好かと言えば、正直そうでも無い。

『失敗作の中でも、一番出来のいいやつ』という言葉は、あながち嘘でも無かったんだろう。

食ってみると、これがまた結構旨くて。甘すぎず、ちょうどいいほろ苦さ。そこらの店で売っても、結構売れるんじゃないかと思うほど。

・・・・っていうのは褒め過ぎか?

あんまり褒めると、あいつ調子に乗りそうだからな。


「おいしい」


悠木はそう言って、夏川のチョコを黙々と食べながら、添えられていた手紙を読んでいる。

だが、手紙を読む悠木の顔が、次第に赤くなってきて。

俺はどうにも気になって、悠木に聞いてみたのだが。


「なぁ、あいつ、何て書いてるんだ?」

「・・・・言えない」

「えっ?」


悠木は大きく首を横に振ると、慌てた様に手紙を封筒にしまい、ポケットの中に入れてしまった。


・・・・言えないって、何だよ?

夏川の奴、いったい何書いたんだ?


その後しばらく、悠木は顔を赤くしたまま、俺と目を合わせることなく玄米茶を飲み干すと、少しだけうたた寝をして、寮に戻って行った。

紙袋いっぱいのチョコを、俺の部屋に残して。


つーか、この大量のチョコを、俺にどうしろと?

俺だって、こんなには食えないぞっ?!

まったく・・・・

今度藤沢でも呼んで、一緒に食ってもらうとするか。


にしても。

ルイが食べてくれると信じてチョコを渡したファンの女子たちが、なんだか気の毒にもなってしまう。

まぁ、そもそもルイは男でもない訳だけど。

そこは、『夢』を見せるのも、人気モデルの仕事と割り切るしか、無いのかもしれない。

実際に、この世に『ルイ』なる男は存在しない。存在しているのは、『悠木瑠偉』という女だ。

それでも、『ルイ』に憧れて疑似恋愛を楽しんでいる女子は、『夢』を見られて幸せなのだろう、きっと。


・・・・じゃあ、俺は?

存在している『悠木瑠偉』と一緒にいる俺は、どうなんだ?

存在している『悠木瑠偉』を、女として見ないようにしている俺は、存在しない相手と一緒にいるのと、同じなんじゃ・・・・


ふと、悠木から誕生日に貰った、トゲトゲの丸いサボテンが目に入る。

俺の好きな形のサボテン。

丸くて可愛いクセに、まるで【触るな!】とでも言うように、全身を棘で覆って。


悠木みたいだな。


ふと、そんなことを思う。


俺もしかして、悠木の事が、好き・・・・なのか?


強く瞑った瞼の裏で。

悠木の犯罪級に綺麗なグレーの瞳が、真っ直ぐに俺を見つめていた。

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