41.バレンタイン①
2月14日。
男にとって、この日は毎年【勝負】の日。
なんて。
そんなもん、ガキの考える事だ。
そして俺はもう、ガキではない。
そう思いながらも、やっぱりソワソワしてしまう。
・・・・これが男の、悲しい性というヤツか。
何食わぬ顔をして学校に行き、何食わぬ顔をして授業を受け、迎えた昼休み。
悠木がいつものように、俺を昼寝に誘いに来た。
「しじょー」
「ああ、行くか」
無意識のうちに、視線が悠木の手を確認していた。
もちろん、悠木はいつもの通り、手ぶらだ。
何考えてんだよ、俺。
悠木が俺にくれる訳ないだろ。
悠木と俺は、そんな関係じゃ、無いんだ。
少なくとも、悠木は望んでないんだから、そんな関係は。
「どうか、したか?」
「いや、別に」
小さく首を振る俺に、悠木は一瞬だけ怪訝そうな目を向けたが。
すぐに図書室に向かって歩き出す。
俺も悠木と並んで、図書室へと向かった。
中学までの俺は、毎年数個はチョコを貰っていた。
仲のいい女友達もいたし。
言いたかないが、かーちゃんもいたし。
おそらくそのほとんどは、義理チョコだろうとは思うけど。
・・・・本命チョコもあったはずだと、思いたい。
これも男の、悲しい性か。
「しじょー」
「ん?」
昼寝を終え、図書室から戻る途中。
悠木がダサメガネ越しに俺を見た。
「今日オレ、早退」
「仕事か?」
「うん。イベント。バレンタインの」
「なるほど」
バレンタイン・イベント。
きっとそれは、女子がわんさか集まって、黄色い声が飛び交うイベントなんだろう。
想像するに難くない。
そして、その中心にいるのは、ルイなんだ。
今俺の隣で、ダサメガネ越しに俺を見ている、悠木なんだ。
こいつはいったい、どんだけチョコを貰うんだろう?
率直に言って、男としては、羨ましいと思ってしまう。
でも。
悠木は・・・・
「じゃ」
「頑張れよ」
自分のクラスに戻ろうとする悠木の背中に、俺はとっさにそう声を掛けていた。
悠木は。
キョトンとして俺を見たあと、怪訝そうな顔をしながらも小さく頷き、クラスに戻っていった。
そりゃそうだ。
頑張れって。
何を頑張るってんだよ。
何言ってんだよ、俺。バカじゃねぇの。




