37.思わぬ訪問者②
そうだ。
悠木、今日来るって言ってたんだった!
思わぬかーちゃんの出現に、悠木の事をすっかり忘れていた俺は、なんだか軽いパニックになっていた。
どうしよ、かーちゃんいるぞ?
大丈夫か、悠木入れて。
いつも女を連れ込んでるとか、思われないか?
「しじょー?」
「あ、あぁ。まぁ、上がってくれ」
「うん」
怪訝そうな顔をしながらも、悠木はいつも通りに家にあがり、そのまま和室の方に行きかけ。
リビングを見て、足を止めた。
リビングでは、かーちゃんが驚いた顔をして、悠木を見ていた。
もしや・・・・
もしやこれは、マズイ展開か?
どうする、俺?!
いや、でも悠木はパッと見だけでは、女だとは分からないはずだ。
ここは、男友達ということで通せば・・・・
冷や汗が吹き出し始めた時。
「もしかして、瑠偉ちゃん?」
「・・・・はい」
「やっぱり!久し振りねぇ、父と母のお葬式の時以来かしら?」
かーちゃんが笑顔で、悠木に歩み寄る。
「もしかして、瑠偉ちゃんもお参りに来てくれたの?」
「はい」
「そう・・・・どうもありがとう。父も母も、きっと喜んでるわ」
かーちゃんに軽く頭を下げると、悠木はいつも通り和室に入り、仏壇に花を供えて手を合わせた。
その姿を、かーちゃんは嬉しそうに眺めている。
えっ?えっ?!
どーゆーこと?!
かーちゃん、悠木のこと知ってたのかっ?!
「まさか、夏希が瑠偉ちゃんと仲良くなってたとは、ねぇ」
いつのまにか隣に立っていたかーちゃんが、何やら感慨深げな顔で、そう呟いた。
「え?つーかかーちゃん、悠木の事知ってたの?!」
「知ってるわよ。おばあちゃんから良く聞いてたから、瑠偉ちゃんのことは」
「えっ?!」
「私たちが引っ越しちゃってから、夏希の顔があまり見られなくなって寂しくなったけど、でも今は、可愛いお嬢さんが毎日のように来てくれるから、寂しくないんだって。たまに、写真も見せて貰ってたのよ。だから、お葬式に来てくれた時にも、すぐ分かったわ」
「へぇ・・・・」
「おばあちゃんね。瑠偉ちゃんみたいないい子が、夏希の嫁になってくれればいいねぇって、話してたのよ」
「よっ・・・・」
嫁っ?!
悠木が、俺のっ?!
仏壇の前で、結構な長い時間じっと手を合わせていた悠木が顔を上げ、ふと俺を見る。
いきなり何言い出すんだよっ、かーちゃんっ!
悠木と目が合うなり、俺の心臓は意思に反してバクバクと鼓動を早め、口から飛び出しそうな勢いだ。
そんな俺に構うことなく、かーちゃんは気軽に悠木に声を掛ける。
「ねぇ、瑠偉ちゃん。良かったら、ご飯、食べて行かない?」
良くない、良くないっ!
きっと悠木は、このあと仕事があるはずだからっ!
頼む、悠木。断ってくれっ!
だが、俺の願いもむなしく。
「はい」
悠木は微笑を浮かべ、コクリと頷いた。




