33.勉強会②
「おんまえ・・・・いい加減にしろって!痛いだろっ!」
「いい加減、馴れなさいよ」
「馴れるかっ!しかも、人のバイトの予定、勝手に把握してんなっ!」
「いいじゃん、別に」
ジンジンと響く背中の痛みに涙目になりながら訴えても、当の夏川はどこ吹く風だ。
「で、なんだよ」
「今日さ、ここ行ってみない?ルイもついこの間行ったっていうクレープ屋さん!」
目を輝かせて夏川が俺に見せたのは、駅の近くに出来たばかりのクレープ屋をバックにし、手にしたクレープをあの綺麗なグレーの瞳で嬉しそうに見つめる、ルイが載っている雑誌の切り抜き。
ルイが悠木だと知っている俺が見ても、やっぱりルイは超イケメンで。
これじゃあ、世の女子が騒ぐのも無理はない、と思ってしまう。
「個人的にも、また来たいって書いてあるし。行ったらルイに会えちゃったりして!」
まるで恋する乙女のように目をキラキラさせる夏川は、そのまま黙っていれば結構可愛いのに。
なんて思いながらも、俺は夏川の提案を却下した。
「悪いな。先約がある」
「えーっ!何よ、先約って!」
だって俺は今日、悠木に勉強を教えてもらう約束をしているから。
藤沢も、一緒に。
そういえば・・・・
妙案を思いつき、俺はブンむくれている夏川に言った。
「お前、暇なら俺んち来いよ。」
「・・・・え・・・・えぇっ?!やだ、なに急に・・・・」
明らかに何かを勘違いしている顔で、夏川は俺から少し距離を取った。
バカなのか、こいつは。
俺をなんだと思ってるんだ。
「お前、知ってるか?期末、一週間後から始まるんだぞ?成績によっては、補講もあるらしいって噂だ」
「はっ?!補講っ?!」
一瞬にして、夏川の顔が青くなる。
俺と似たり寄ったりの成績なんだから、当然の反応だ。
おまけにやはり、補講の話は、初耳だったらしい。
「今日、藤沢と俺、俺んちで悠木に勉強を教えて貰うんだよ。お前も来ないか?」
「悠木、って・・・・悠木瑠偉?」
「ああ」
「ふうん・・・・」
「あいつ、こないだの中間も、学年トップだったしな」
「そう、ね」
「まぁ、無理にとは言わないけど」
あのあと。
色々あったけど、夏川の『悠木瑠偉が、好きなの?』の質問に、俺はちゃんと答えていた。
悠木と俺は、そんな関係ではないと。
夏川はあまり信じてはいないようだったけど、それを証明するには、今日は絶好のチャンスじゃないか。
もし、夏川が来てくれるのなら。
少しの間視線を彷徨わせた後、夏川は言った。
「うん。行く」
「わかった。じゃ、あとでな」
夏川と別れ、自分の教室に戻りながら、俺はなんだか楽しみだった。
夏川の事よりも、藤沢の事が。
藤沢の奴、どんな反応すんだろ。
夏川の事話しただけで、あんなに真っ赤になってたくらいだし。
・・・・勉強になんか、ならなかったりして、な。




