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30.噂②

「ちょっと、いいか?」


とたんにざわつく周囲に俺は焦りを感じて、慌てて悠木の背中を押すようにして、外へと向かう。

HRが終わったばかりの時間だ。

これから帰る奴らも、部室へ向かう奴らも、みんな廊下に溢れてる。

それでなくたって、今俺らは、【噂の張本人】だと言うのに。


頼むから、少しは周りを気にしろよ!


人目を避けるようにして、悠木と俺は、やっとの思いで校門から抜け出した。


「お前、何かしたのか?」

「は?」

「随分、周りを気にしているようだったから」

「・・・・はぁ」


呆れるのを通り越して、溜息しか出てこない。

ボーッとしている奴だとは思っていたけど、こいつ、こんなに鈍感だったっけ?


「別に。で?何だ?」

「ん?」


家への道を、久しぶりに悠木と並んで歩く。

しっくりくる。

正直、そんな感じだった。

昨日まで、なんやかんやと誰かしら捕まえて同じ道を歩いていた時と比べると、格段に落ち着く。


「何か話があったんだろ?」

「・・・・あぁ」


頷いたものの、悠木はそのまま黙って歩き続ける。


・・・・なんか、あったんだろうか・・・


黙ったままの悠木に不安を感じながらも、俺も黙って歩くしかない。

暫くして、俺の家の前に着いた時。

ようやく悠木は足を止めて俺を見た。


「オレ、何かした?」

「へっ・・・・?」


おおかた、俺が悠木を避けている事に感づいて、何か聞かれるんだろう、とばかり思っていた俺は、何とも間の抜けた声を出してしまった。


「気に障るような事をしたんだったら、謝る。オレ、よくやるんだ。知らない内に、誰かを傷つけてる」

「いっ、いや、そうじゃなくて・・・・」

「鈍感、って言われる、よく。だから、しじょーに嫌な思いをさせたんだったら、言って欲しい。オレ、分からないから・・・・」


困ったような、哀しそうな、曖昧な表情を浮かべ、ダサメガネ越しに俺を見ながら、悠木は言った。


鈍感、か。

それは確かに、間違ってはいないかもしれないけど。


言いかけて、やめた。

悠木が鈍感だと言うなら、俺も相当鈍感なのかもしれない。

こいつがこんなに悩んでいるなんて、全然気づかなかったのだから。

悠木の事を考えて距離を取っていたつもりだったけど、結局は俺自身が、周りの目を気にしていただけだったのかもしれない。

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