29.噂①
「なんだかなぁ・・・・」
帰りのHR中、俺は窓の外をぼんやりと眺めていた。
最近、全く面白くない。
何をやっても、つまらない。
理由に、心当たりはあった。
俺は今、意識的に、悠木を避けていた。
少し肌寒くなってきた頃だっただろうか。
『四条と悠木が、どうやら付き合っているらしい』
『悠木は毎日、四条の家に通っているらしい』
『どうやら、ふたりは既に体の関係もあるらしい』
などという噂が、まことしやかに囁かれるようになり、ついに俺の耳にも入ってくるようになっていた。
そんな噂放っておけ、と。
俺は最初、そんなくだらない噂は気にもせず、藤沢の助言通り、悠木と変わらぬ関係を続けていたのだが。
「お前、瑠偉と付き合い始めたのか?」
などと、藤沢にまで言われるようになってからは、さすがにこれではマズいと思い、悠木と過ごす時間をできるだけ減らすようにしていたのだ。
なにがマズいって。
俺は別にいいんだけど。
悠木に、悪いじゃないか、そんな噂。
実際、俺と悠木は付き合っている訳ではないし。
それになにより、悠木は俺に、自分を『男』として扱って欲しいみたいだから。
俺の友達は、悠木だけじゃない。
他にも友達はいるし、バイトだってしているし。
家に帰れば、掃除に洗濯に、たまに料理。・・・・あと、勉強も多少は。
やらなきゃいけない事なんて、たくさんある。
それに。
悠木と一緒にいたところで、学校じゃ昼寝するとか。うちじゃ、偶に一緒にテレビを見る事もあるけれども、だいたいあいつはテレビ見ている時間より、寝ている時間の方が多いくらいで。
稀に起きていたところで、たまに悠木がボケた事いうから、俺がツッコミを入れるとか。
逆に、俺の失敗を、悠木が冷静に指摘するとか。
本当に、そんな程度。
掃除を手伝ってくれる訳でもなければ、もちろん洗濯を手伝ってくれる訳でもないし。
勉強を教えてくれる訳でもない。
かと言って、一緒に何かをして遊ぶ訳でもないし、もちろん、恋愛的な何かがある訳でも、ない。
なのに。
悠木が、いない。
ただそれだけなのに。
何をやっても、面白くない。
悠木、ちゃんと寝られてるかな・・・・
そうこうしているうちにHRも終わり、俺は急いで教室を飛び出した。
ボヤボヤしてると、悠木が来てしまいそうだったから。
なのに。
「しじょー」
「悠木・・・・」
教室を出てすぐのところで、悠木が俺を待っていた。




