28.悠木の過去⑥
えっ?
そう言う事って?
【つまり】が全然、つまってないけどっ?!
全然わかんないんですけどっ?!
「えっ?えっ?!で、俺はどうすりゃいいんだよっ?!」
「知るか、俺に聞くな」
「そんな事言うなよ!俺を助けてくれよっ!」
「だいたい、何でお前が瑠偉の事でそんなに動揺してんだよ?今まで男だと思ってたんだろ?男だと思ってた瑠偉が女だったら、何かお前に問題でもあるのか?」
ふいに、強力なドストレートが胸元に食い込んだ感じだった。
確かに。
言われてみれば、悠木が女だったとして、何か問題があるだろうか。
いやいや、端から見れば問題だらけなのは、この際置いておくとして。
俺自身に、何か問題があるだろうか。
「いや・・・・」
「だったら、今まで通りで、いいんじゃないか?」
「今まで、通り?」
「瑠偉を、男として見てやれば」
「・・・・確かに」
「まぁ、それがいいか悪いかは、分からないけどな」
「えっ?」
気にするな、こっちの話だ。
そう言って、藤沢は立ち上がった。
「なんか、長居しちまったな」
「いや、こっちこそ、悪かったな」
玄関先まで藤沢を見送り、靴を履き終えたところで、ふと俺は思い出した。
藤沢が、わざわざ校舎の外で俺を待っていたことを。
「なぁ、藤沢」
「なんだよ、まだあるのか?」
藤沢は、面倒そうに振り返ったが。
「違うよ。お前、なんか俺に用があったんじゃないのか?」
「・・・・あぁ」
急に顔を赤くし、口元を押さえる。
「それはまた今度・・・・」
「気になるから、今言ってくれ」
「いや・・・・」
「時間は取らせないって、言ってたよなぁ?確か」
「・・・・」
少しの間、藤沢はその場に立ったまま躊躇っていたが、やっと俺の方を向いた。
「お前はその・・・・夏川とは・・・・」
「ん?夏川がどうかしたのか?」
「付き合ってる、のか?」
「・・・・はぁっ?」
見れば、藤沢は耳まで赤くなっている。
もしや藤沢、夏川の事が・・・・?
「俺は、夏川とは付き合っていない。俺はあいつの事そんな風に見ていないし、あいつだって俺の事、ただの都合のいい男だと思ってるさ」
「そう、なのか?」
「ああ、そうだ」
「そっか」
すると、藤沢はいきなりその場で俺に向かって頭を下げた。
「すまない」
「なっ、なんだよ急に」
「俺ずっと、お前が夏川と瑠偉に二股かけてるんだと思ってて・・・・」
「はぁっ?!」
「悪かった」
とんだ勘違いもあったもんだと、少しだけムカついたけど。
そうか。
だからか。
だから藤沢は、いっつも俺を睨んでたのか。
「藤沢さ」
「なんだ?」
「夏川が好きなのか?」
「えっ・・・・いやっ・・・・」
藤沢は、赤い顔のまま、プイッと顔を背ける。
藤沢、いい奴だな。
おまけに、ものすごく、分かりやすい。
「あいつ、いい奴だし、まぁまぁ可愛いけど・・・・気を付けろよ」
「え?なにに?」
「結構、暴力的だからな」
「そうなのか?」
「でもお前のそのガタイなら、全然耐えられると思うけどな」
照れくさそうに藤沢は笑う。
俺も、その藤沢の肩をバシバシ叩きながら、笑った。




