27.悠木の過去⑤
「なぁ、確認だけど」
そうって藤沢は、じっと俺を見た。
「ほんとにあいつ、お前の前で【オレ】って言ってるのか?自分のこと」
「え?ああ、もちろん」
「ほんとに、一度寝たら全然起きないのか?」
「ああ」
何がそんなに気になるというのか。
再び、う~ん、と唸って、藤沢は小さく頭を振る。
「あいつ、男のカッコはしてるけど。ちゃんと【私】って言ってるぞ、自分のことは」
「え?」
「少なくとも、俺の前や、俺が聞いてる限り、学校の中でも、な」
「ウソだろ?」
「ウソじゃない。それから、あいつが熟睡できるのは、本当に安心していられる場所だけだ。たとえば、四条のじーさんとばーさんち。ここ、だな」
「まぁ、ここでも確かに寝てるけど」
「えっ?!あいつ、今でもここに来てるのかっ?!」
マズイッ!
と思った時には既に時遅し。
藤沢は、あんぐりと口を開けて、俺を見ている。
そりゃあな。
男1人で住んでいる家に、女の子がただ寝に来るなんて、普通有り得ないからなぁ。
もっとも、俺は悠木をずっと、男だと思っていた訳だけど。
「ま、まぁ・・・・成り行きで、な。でも勘違いするなよっ?!俺、あいつの事、今までずっと男だと思ってたんだからな?!別に何にもやましいことなんか」
「分かってるよ」
やっぱり、藤沢はいい奴だ。
驚きながらも、俺を信用してくれているみたいだし。
「で、な。悠木は普通に、昼休みも学校で爆睡してるぞ?」
「学校で?!」
「ああ。悠木の奴、たまに昼寝に誘いに来るんだよ、俺のこと。一応、人目に付かなくて、寝やすそうな場所をいくつかピックアップしてあってな。ローテーションで、昼寝しに行ってるんだ、2人で。今でこそ、時間の感覚を覚えてくれたみたいで、割とすぐ起きるようになったけど、最初の頃なんて、起こすのすげー大変だったぞ?」
俺の言葉を、信じられないような顔で藤沢は聞いていた。
「あいつが、爆睡?」
そしてまた、藤沢は腕を組んで、うーん、と唸って考え込んでしまう。
そうしてしばらく考え込んだあと、藤沢はようやく顔を上げた。
「俺が思うに」
「うん」
「瑠偉は、男を意識した相手に対しては、無意識の警戒心から【オレ】になっちまうんじゃないかな。多分、まだ恐怖が残ってるんだと思うんだ、男に対して」
ああ、それはものすごく、理解できる。
俺は、藤沢の言葉に大きく頷いた。
「でも、俺が見る限り、瑠偉はどう見てもお前に懐いてる。あの人見知りの瑠偉が、わざわざ他のクラスのお前を誘いに行くなんてことも、今までの瑠偉なら考えられないし。おまけに、あの瑠偉が、ここの家ならまだしも、人目に付かない場所で、しかもお前の隣で爆睡するとか、もう俺には全然理解できない」
「え?どーゆーこと?」
「だから、分からないんだよ、俺にも」
顔をしかめて、藤沢は言った。
「お前は、瑠偉に男として警戒されながら、懐かれてもいて安心されてもいる。つまりは、そういう事だ」




