23.悠木の過去①
「悪いな。今日は野球部の練習はいいのか?」
「野球?俺、ラグビー部だけど」
「あ・・・・あぁ、そっか」
藤沢が運動部だ、という情報は得ていたものの、野球部だかサッカー部だかは定かではなかった。というか、興味が無かった。
でも正解は、ラグビー部だったようだ。
どうりで、いい体をしているはずだ。
「今日は練習は無い。それよりお前、もう大丈夫なのか?」
「・・・・体は、な」
「・・・・?」
とりあえず、ペットボトルのお茶をコップに注ぎ、藤沢の前に置く。
リビングのテーブルを挟み、俺は藤沢と向き合った。
なんだかまだ、藤沢とは、俺の部屋で話す気にはなれない。
それに、俺の部屋には・・・・
悠木専用の、枕があるから。
「で、助けてくれとは?俺は何をすればいいんだ?」
「うん・・・・悠木の事、なんだけど」
「瑠偉の事?」
「うん。悠木とは、幼馴染み、なんだろ?」
「ああ」
それがどうした、という目で、藤沢は俺を見る。
なんだかひどく、口の中が渇いていた。
喉が、カラカラだ。
悠木の事を聞くだけなのに、一体何故俺は、こんなに緊張しているんだろう?
お茶で渇きを潤し、ひとつ深呼吸をしてから、俺は藤沢に聞いた。
「悠木が女って、本当なのか?」
藤沢は、黙ったまま目を見開いて俺を見た。
それだけで、答えはすぐに分かった。
やはり、悠木は女なんだ。間違いない。
だって、藤沢の目は、
お前、今さら何言ってんだ?
と言っていたから。
「悠木が男のカッコしてモデルやってるのも、知ってるんだよな?」
「ああ」
「なんで?」
「なにが?」
「なんであいつ、そんなことしてんだよ。なんであいつ、自分のこと【オレ】なんて言うんだよ。お陰で俺、全然わかんなかったよ、あいつが女だったなんてっ!」
またも、藤沢は黙ったまま、目を見開いて俺を見た。
だがさすがに、こればっかりは、藤沢の目を見ただけでは、答えは分からない。
しばらくの沈黙の後、藤沢がようやく口を開いた。
「あいつ、お前の前で【オレ】って言ってたのか?自分のこと」
「ああ」
「・・・・そうなのか・・・・」
そう呟いた藤沢の眉間には縦に皺が入り、何やら難しい顔をして考え込んでいる。
俺、何かマズイ事言っただろうか。
不安になり始めた時。
再び藤沢が口を開いた。
「こんなこと、俺が話すべき事じゃないかもしれないけど」
「え?」
「お前は知っておいた方が、いいかもしれないな」
「何を?」
「瑠偉のことだよ」
そう言って、藤沢は悠木の事を話し始めた。




