19.悠木の誕生日②
バイトに行く前に、何とかプレゼントだけは買えた。
買うものは決まっていたから。
でも、ケーキが間に合わなかった。
バイト中、俺はケーキの事で頭がいっぱいで、失敗だらけだった。
1,000円弱の買い物のお客さんから10,000円渡されたのに、1,000円と間違えて小銭しかお釣りを渡さなかったり(もちろん、指摘されてちゃんと正しいお釣りを渡したけど)。
品出しの棚を一列間違えたり。
ペアでシフトに入っている奴にまで、「何かあったのか?」と心配される始末。
まぁ。
最悪、うちの店のケーキでもいいんだけど。
でも。
できればちゃんとケーキ屋で、小さいホールケーキを買いたい気分。
だって、悠木が俺にそうしてくれたから。
バイトを上がると、俺はすぐに近所のケーキ屋に走った。
急いで飛び込んだが、残念ながら、ホールケーキは売り切れ。
でも、ちょうど2つだけ残っていたショートケーキを、割引してもらって買って帰って来た。
もちろん、ろうそくも付けて貰って。
ケーキはやっぱり、予約しなくちゃダメだな。
来年は予約しておこう。
なんて、思いながら。
そういや、【夜】とは言ったけど、時間言っときゃ良かったな。
って、前もなんか、同じような事思ったような?
でも今俺は、悠木の連絡先を知っている。
連絡先さえ知ってれば、連絡を取りたい奴に、すぐに連絡が取れる。
ほんと、便利な世の中だよな。
そんなくだらない事を考えつつ、家の鍵を開けながら、悠木に電話を掛ける。
「ああ、悠木?悪い、今帰ったんだけど」
「うん」
・・・・ん?
スマホ越しではない声が聞こえたような気がして振り返ると。
すぐ後ろに悠木が立っていた。
「わっ!」
思わず、持っていたケーキの袋を取り落としそうになり、慌てて手に力を入れる。
「おかえり」
「あ、あぁ・・・・お前、いるなら声くらいかけろよな」
「ごめん」
「心臓に悪いぞ、まったく・・・・」
「ごめん」
「ずっと待ってたのか?」
「いや」
「とりあえず、入ってくれ」
「うん」
家に入ると、悠木はいつものように、まっすぐ仏壇のある和室に向かう。
「悪いけど、ちょっとそこで待っててくれないか?」
「うん」
その間に、俺は急いで部屋に向かい、ケーキやら皿やら飲み物やらをセッティングする。
もちろん、プレゼントも一緒に。
まだ、時間は8時半過ぎ。
悠木の寮の門限は、確か10時。
1時間くらいは、ゆっくりできるだろう。
「悠木、いいぞ」
部屋から声を掛けたが、一向に悠木が来る気配はない。
まさか、あいつ・・・・?!
和室に向かうと、その【まさか】だった。




