18.悠木の誕生日①
やばい。
今日という今日は早く帰って・・・・
HRが終わるや否や、教室を飛び出したところで。
「四条、見っけ」
夏川に捕まった。
でも、今日はダメだ!
絶対に、絶対に、ダメなんだって!
「ごめん、夏川!俺今日めっちゃ急いでるからっ!」
「えーっ!四条っ、もうっ、四条ってばっ!!」
夏川をかわし、急いで昇降口から校舎を出る。
うかうかしていると、今度は悠木に見つかりそうだ。
別に避けている訳ではないけど、今日はダメだ。
バイトの日は無理だし。
夏川はなんやかんやと誘ってくるし。
悠木はいつフラリとやってくるか分からないし。
なんて、伸ばし伸ばしにしていたら、気付けば、悠木の誕生日は、今日になっていた。
今日こそ絶対に、買いに行かないと!
コソコソと周りを見回しながら歩くのは挙動不審でイヤだけど、悠木はいつどこから出て来るかよく分からない奴だから・・・・
「しじょー」
ほら、な。
「何、してるんだ?」
・・・・って!!
ピタリと足を止めて、俺は息を飲んで悠木を見た。
ほんとに、なんなんだよ、お前はっ!!
「お前、何でここにいるんだっ?!」
「今、帰り」
「早くないか?!」
俺だって、いっそいで教室飛び出して来たんだぞ?!
何でいつでもボーッとしているお前が、俺より早いんだよ?
「担任と副担任、早退したから。HR短かかった」
ったく・・・・何やってんだよ、悠木のクラスの担任と副担任っ!
何で今日に限って、揃いも揃って早退するんだっ!
きっと俺は、1人百面相状態だったのだろう。
悠木は怪訝そうな顔で、ダサメガネ越しに俺を見ていた。
「何か、あったのか?」
悠木の言葉に、ハッと我に返る。
いかんいかん、落ち着け、俺!
今日こそ、絶対、こいつの誕生日プレゼントを買いに行かなければならないんだぞ?
とりあえず、早くこいつと別れなければ。
今日はバイトもあるし、時間無いしっ!
・・・・いやいや。
別れちゃだめか。今日中にこいつに渡さなくちゃ意味ないし。
でも、一緒に選ぶのも、なんか違うし。
あー、どうしたらいいんだっ?!
「しじょー?」
「ちょっと待て」
「オレはいいけど。・・・・いいのか?」
「うん」
「でも・・・・」
「あーもうっ!」
人が真剣に考えてる時にっ!!
と、睨みつけた悠木の後方にあったのは、不機嫌極まりない顔をした夏川の姿。
「こら~っ、四条っ!!」
「ゲッ!・・・・行くぞ、悠木っ!」
「えっ」
とっさに悠木の腕を掴み、俺は慌てて学校を出た。
「しじょー」
「なんだ?」
「もう、いいだろ」
「・・・・ああ」
そう言われてようやくスピードを落とした俺に、繰り返される悠木の言葉。
「もう、いいだろ?」
「だからもう、歩いてるだろ」
「手」
・・・・て?
・・・・あっ!!
気付いて慌てて悠木の腕を離すと、悠木はまた、ダサメガネ越しに怪訝そうな目で俺を見た。
「大丈夫か?」
「あ・・・・ああ。」
とっさに、とは言え、なんでこいつの腕掴んで走ってんだよ、俺。
おまけに、もうじき俺んちだし。
結局ずっと悠木と一緒で、プレゼントも買えてないし。
「今日、バイト?」
「ああ、これから、な」
「じゃ、オレ、帰る」
「えっ・・・・」
俺が立ち止まった時には、悠木は既に背中を向けて歩き出していた。
その背中に、俺はとっさに叫んでいた。
「夜っ!うち来てくれっ!待ってるから!」
立ち止まって振り返った悠木は、やはり怪訝そうな顔をしていて。
それでも小さく頷くと、そのまま帰って行った。




