16.雑誌①
「わりぃ、遅くなった」
夏川との待ち合わせに20分ほど遅刻して、俺は店に入った。
夏川はチラリと顔を上げると、
「ほんと、おそっ。今日は四条のおごりね」
と言って、すぐ目の前の雑誌に目を戻す。
高校に入って、最初の夏休みの、今日は最終日。
当初の俺の予定では、可愛い彼女と毎日デート三昧だったはずが・・・・
現実は、甘くは無い。
掃除洗濯はいつものことだが。
両親からの仕送りばかりアテにしていても悪いからと、とりあえずコンビニバイトも始めたし。
・・・・中間に引き続き、期末もボロボロだったおかげで、当然のごとく補講の対象者になっちまったし。
悠木は、フラッとやってきては、昼寝して帰って行くし。
夏川は、なんだかんだと俺を色々と連れまわすし。
今日も、昼ちょっと前に悠木から連絡があり、昼寝をしに来ていて、今さっき帰ったところだ。
じいちゃんとばあちゃんの仏壇に手を合わせて、俺の部屋で昼寝をして(たまに、仏壇の前でそのまま寝ていることも)、起きると同時に帰って行く。
「お前、どうせなんもしないなら、勉強くらい教えてくれよ」
寝ている悠木に文句を言ってみたものの、迷惑とかそんなことは全く思っていない。
一度、なんでわざわざ俺んちに寝に来るんだ?と聞いたところ、事務所の寮だとよく眠れないとか、言っていた。
反対に、俺んちだと、良く眠れるんだとか。
そうそう、悠木は事務所の寮に住んでいるらしい。
両親は仕事で海外に行ってしまったから仕方なく、だそうだ。
でも、まぁ。悠木はいいとして。
問題は、夏川だ。
3日と空けず連絡してきては、やれどこのかき氷食いに行こうだの、どこの店に買い物に行こうだの、なんだかんだと俺を誘い出す。
俺、このままだと本当に、夏川と付き合ってると思われるんじゃなかろうか?いや、もう周りからは思われてるんだけど!
でもなぁ。
俺、夏川のこと、そんな風に見てないしなぁ。
夏川だって、俺なんかに構ってるより、他の男でも誘えばいいのに。
どうせ、俺のことなんて、都合のいい男くらいにしか思っていないんだろうから。




