表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/131

15.ビジネスキス

 逆?

 逆とは?


 疲れもあったし、言われている意味もよく分からないし。

 ポカンとしている俺の腕が悠木の強い力に引っ張られ、気付けば俺は、悠木にのしかかられているような体勢になっていた。


「ちょっ・・・・」

「動くな」


 仰向けになった俺の体の横に両腕をつき、微動だにせずに、悠木は囁く。

 元々色白の肌はほんのりと色づいていて、何やら妙に色っぽい。

 そのうえ。

 あの、犯罪級に綺麗なグレーの瞳は、これで落ちない女がいたら教えて欲しいと思うほどの色気を秘めて、至近距離で俺を真っ直ぐ見つめている。


『そうそう、いいよ。そのまま近づいて』


 離れた場所から、誰かの声がする。

 悠木の瞳に魅入られてしまったかのように、俺の頭は思考を停止してしまったらしい。

 気付けば。

 僅かに伏せられた悠木の瞳は俺のすぐ目の前にあって。

 俺の口は悠木の口で、完全に塞がれていた。




「しじょー」

「・・・・」

「怒ってるのか?」

「・・・・別に」


 帰りは、真菜さんに俺の家まで車で送ってもらった。

 予想外の臨時収入も手に入れた。

 そしてなぜか、悠木まで俺の家の前で車を降りた。

 そして、そのまま今、俺の部屋の中にいる。

 今の悠木はあのイケメンモデルのルイではなく、いつもの悠木だ。

 その悠木が、ダサメガネ越しに、俺の様子を窺うように、叱られた子供のように、上目遣いで俺を見ている。


「ほんとか?」

「あぁ」


 本当に、別に俺は怒っている訳ではなかった。

 ただ。

 あんな事のあとに、どんな顔をして悠木を見ればいいのか、分からなかっただけだ。


「良かった」


 硬い表情をしていた悠木が、やっと微かな笑みを浮かべる。

 ここにいるのは、いつもの悠木だ。

 ルイではない。

 そう割り切ると、不思議と落ち着いた。

 きっと俺は夢を見ていたんだ。

 そう思えばいい。


「大変な仕事だな」

「まぁ」


 悠木の前にインスタントコーヒーの入ったカップを置き、テーブルを挟んで悠木の前に座る。

 両手でカップを持つ悠木のダサメガネが湯気で真っ白になるのを見て、俺はなんだかおかしくなって笑った。

 こいつは、悠木だ。

 間違いなく、いつもの悠木だ。


「しじょー?」

「あぁ、ごめん」


 誰も知らないだろうな、ルイのこんな姿なんて。

 でも俺は、ルイよりも悠木の方がいい。

 ・・・・藤沢が言っていた事も、あながち間違いじゃないのかもしれない。

 なんだか癪に障るけど。


「頑張れよ」


 ダサメガネを真っ白にしたまま、悠木が小首を傾げる。

 その姿がやっぱりなんとも滑稽で。

 俺はしばらくの間、腹を抱えて笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ