13.モデルデビュー
「悪いわね、急に。でも、ルイがキミなら大丈夫だって言うから」
真菜さんが、申し訳なさそうに、何度も俺に頭を下げる。
木下 真菜さん。
悠木のマネージャー。
悠木を見い出し、モデルとして世に送り出した張本人らしい。
ルイ?
・・・・ああ、悠木のことか。
そういやあいつ、悠木 瑠偉だったな。
モデル名、本名使ってたのか。
しかし、それでよくバレないよな。まぁたしかに、いつものあのカッコからじゃ、あのイケメンモデルの『ルイ』には、結びつかないだろうけど。
いっぱしのモデルよろしく、顔に化粧などを施されながら、鏡に映った自分を見る。
メイクさんが手際よく化粧を施し、髪を整えていくと、いつの間にか、鏡の中には見知らぬ顔が映っていた。
・・・・だれ、これ。
「あら・・・・うん、いいわね。さすがにルイが勧めるだけあるわ。キミ、このままモデル続けてみない?」
真菜さんが俺の肩に手を置き、顔を近づけながら鏡を見る。
鏡の中の真菜さんが肩に手を置いているのは、鏡の中の見知らぬ奴。
って。
これ、俺かっ?!
「真菜さん」
「ルイ、準備できたの?」
鏡越しに、イケメン『ルイ』が部屋に入って来るのが見えた。
モデル姿の悠木を見たのは2回目だったが、それでもやっぱり、目が惹きつけられてしまう。
さっきまで俺の隣で寝ていたあいつと同一人物だとは、とてもじゃないけど思えない。
「しじょー?」
「・・・・あぁ」
メイクさんのお陰で、俺もそれなりには仕上がっていたものの、今の悠木の姿にはとてもとても・・・・
いや、マジで隣になんて、並び立ちたくない。
だが悠木は、露わになっている綺麗なグレーの瞳を細め、口の端を上げて白い歯を見せ、ニコッと笑って言った。
「うん。いい」
・・・・やめてくれ、悠木。
ずるいぞ、その不意打ちスマイルは!
俺をドキドキさせて、どうするつもりだっ!
「ほんとよねぇ。だから今ね、彼をモデルに勧誘していたとこだったんだけど」
「ダメ」
「えっ?」
「オレが困る」
急に笑顔を消し、悠木は無表情になって真菜さんを見た。
無表情というか、何やら機嫌が悪そうにも見える。
ダメだ。うん。
そりゃ、ダメだろう。
でもなんか、悠木にソッコーで全否定されると、それはそれで傷つくというか・・・・
でもなんだ?困るって。
なんで悠木が困るんだ?
「ふ~ん・・・・そういうこと」
さっぱり訳が分からない俺の隣で、でも真菜さんは何やら意味が分かったようで。
意味深な笑みを浮かべ、悠木と俺を交互に見る。
「なら、仕方ない。諦めるわ。でも」
ポンっと悠木の肩に手を置き、その手に力を入れて悠木を引き寄せると、真菜さんは耳元で何事かを囁いていた。
悠木は無表情のまま頷き、言った。
「分かってる」




